【2026年度版(令和7年度)】
中小企業の社長・役員の年収偏差値
— 役員報酬 661 万円は一般社員より高いのか
第1章:「社長って、そんなにもらってないの?」
「社長」と聞くと、高級車に乗り、タワーマンションに住む姿を想像するかもしれません。しかし、日本の企業の 99.7% は中小企業です。その多くの社長は、世間のイメージとはかなり異なる報酬で経営を担っています。
国税庁「民間給与実態統計調査」によると、資本金 2,000 万円未満の企業における役員の平均報酬は 661 万円 です。この金額を聞いて「思ったより少ない」と感じた方も多いのではないでしょうか。
実は、上場企業に勤めるサラリーマンの加重平均年収は 771 万円です。つまり、中小企業の社長の多くは、大企業の一般社員よりも低い報酬で経営責任を負っている ということになります。
この記事では、中小企業の役員報酬を公的統計で正確に把握し、「偏差値」で一般労働者と比較した結果を可視化します。
出典: 国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」(2024年9月公表)
出典: 厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」結果の概況(2026年3月24日公表)
出典: 古田土経営 中小企業 1,314 社の社長年俸調査
第2章:中小企業の役員報酬はいくらか — 資本金規模別の実態
国税庁データ: 資本金規模別の役員報酬
国税庁「民間給与実態統計調査」は、民間企業の給与実態を最も網羅的に調査した統計です。この調査から、資本金規模別の役員報酬の平均値が明らかになっています。
資本金2,000万未満: 661万円 / 全規模平均: 849万円
日本の企業の 99.7% は中小企業 → 大半の「社長」はこの水準
経常利益別の社長年俸(1,314社調査)
もう一つの重要なデータとして、古田土経営が中小企業 1,314 社を対象に行った調査があります。こちらは「社長個人の年俸」に特化しており、企業の経常利益と社長の報酬の関係が明確に示されています。
| 経常利益 | 社長の平均年俸 |
|---|---|
| 5億〜15億円 | 4,900万円 |
| 2〜5億円 | 3,300万円 |
| 1〜2億円 | 2,400万円 |
| 5,000万〜1億円 | 1,700万円 |
| 3,000万〜5,000万円 | 1,300〜1,500万円 |
| 1,000万〜3,000万円 | 1,200〜1,500万円 |
| 500万〜1,000万円 | 900〜950万円 |
| 250万〜500万円 | 680万円 |
| 1万〜250万円 | 550万円 |
1,314社の平均: 約1,021万円。ただし、黒字企業が81.4%を占める調査のため、赤字企業を含めた実態はさらに低い可能性があります。
経常利益1,000万なら社長年俸は約1,200万円、経常利益250万なら約550万円。
利益が出なければ社長の報酬も上げられない — これが中小企業経営の現実です。
同族会社のオーナー社長 — 「報酬」だけが収入ではない
ここで重要な注意点があります。日本の中小企業の大半は同族会社(株主の3人以下とその親族で株式の50%超を保有する会社)です。同族会社のオーナー社長は株主でもあるため、役員報酬以外にも経済的な利益を得る手段があります。
① 配当
社長=大株主なので、配当を出すかどうかは自分で決められます。ただし、配当を実施している中小企業は全体の約20〜30%程度にとどまります。理由は以下の通りです。
- 二重課税: 法人税(約30%)を払った後の利益から配当を出し、さらに配当所得課税(20.315%)がかかります
- 相続税対策: 配当を出すと株式の評価額(類似業種比準方式)が上がり、相続税が重くなるリスクがあります
- 役員報酬のほうが有利: 給与所得控除が使えるため、同じ金額なら報酬で受け取るほうが税負担が軽いケースが多いです
② 報酬以外の経済的利益
- 社宅制度: 法人名義で賃貸し、本人負担は家賃の10〜50%程度
- 社用車の私的利用: 法人名義の車両を通勤・プライベートにも使用
- 退職金: 在任中は報酬を抑え、退職時に一括で受け取る節税戦略(退職所得控除が大きい)
- 法人契約の生命保険: 解約返戻金を退職金の原資にするスキーム
株式配当 / 社宅の経済的利益 / 社用車 / 退職金 / 出張旅費日当(非課税)
同族会社のオーナー社長の実質的な経済的利益は、統計上の報酬額より高い可能性があります。
ただし、これらの手段を活用できるのは「利益が出ている企業」に限られます。
第3章:「社長なのに大企業社員より低い」パラドックス
ここで衝撃的な比較をします。
この「逆転」にはいくつかの背景があります。
- 中小企業の社長は利益に連動 — 会社が儲からなければ報酬を上げられません
- 社会保険料の負担 — 役員報酬を上げると法人の社会保険料負担も増えるため、あえて抑えるケースが多いです
- 法人税とのバランス — 報酬を上げすぎると個人の所得税率が上がり、法人に利益を残したほうが有利な場合があります
- 退職金で回収 — 在任中の報酬を抑え、退職金として一括受給する節税戦略をとる社長も少なくありません
第4章:偏差値に換算するとどう見えるか
中小企業の役員報酬を、一般労働者5,836万人の賃金分布で偏差値に換算します。
| 区分 | 年収 | 偏差値 | 100人中 | 上位% |
|---|---|---|---|---|
| 一般労働者 平均 | 516万円 | 50.0 | 50位 | 50.0% |
| 中小役員(資本金2千万未満) | 661万円 | 57.6 | 22位 | 22.4% |
| 全規模 役員平均 | 849万円 | 67.4 | 4位 | 4.1% |
| 中小企業 社長(1,314社平均) | 1,021万円 | 76.5 | 1位 | 0.4% |
| 大企業 役員(資本金10億以上) | 2,093万円 | 100超 | — | 0.01%未満 |
偏差値57.6 の意味
偏差値57.6は「100人中22位」の水準です。つまり、一般労働者の中では上位約22%に入りますが、飛び抜けて高いわけではありません。
50代後半の正社員男性(年収約710万円、偏差値約60)と比較すると、資本金2,000万円未満の中小企業役員は、ベテランサラリーマンより低い偏差値になるケースすらあります。
第5章:母集団パラドックス — 自社の中での位置
ここまでは一般労働者全体と比較してきました。では、「自社の社員」と比べたらどうでしょうか。
資本金2,000万円未満の企業における正社員の平均給与は約438万円です(国税庁調査)。自社の社員を母集団にした場合、社長の661万円は当然ながら「トップ」です。
| 比較する母集団 | 661万円の位置づけ |
|---|---|
| 自社の社員(平均438万円) | トップ(最高額) |
| 一般労働者 5,836万人(平均516万円) | 偏差値57.6(上位22%) |
| 上場企業社員(加重平均771万円) | 平均以下 |
| 全規模の役員(平均849万円) | 平均以下 |
この構造は、中小企業の経営者が抱える現実的な悩みとも直結しています。「自分は社長なのに、友人の大企業勤務の年収を聞いて複雑な気持ちになる」— そんな経験をした方は少なくないでしょう。
第6章:あなたの年収偏差値を知る
中小企業の社長であれ、大企業のサラリーマンであれ、「自分の年収が社会の中でどこに位置するか」を知ることは、キャリアや経営判断の出発点になります。
DataLabo年収偏差値チェッカーでは、性別・年齢・学歴・企業規模・業種・都道府県の6つの属性を指定して、同じ条件の労働者と比較した偏差値を算出できます。
経営者の方は「企業規模」を変えて偏差値を見比べると、自社の報酬水準が市場でどう評価されるかのヒントが得られます。
第7章:数字を知ることが、次の一手になる
中小企業の社長の報酬は、「経営の写し鏡」です。会社の利益が伸びれば報酬も伸び、利益が出なければ報酬も抑えられます。
- 資本金2,000万未満の役員報酬: 661万円(偏差値57.6)
- 中小企業社長の平均年俸(1,314社): 1,021万円(偏差値76.5)
- 上場企業社員の加重平均: 771万円 — 中小役員661万より高い
- 大企業役員(資本金10億以上): 2,093万円 — 中小の3.2倍
「社長なのに」という思い込みを数字で解きほぐすと、中小企業経営の現実が見えてきます。報酬に不満を感じるなら、まず自分の位置を客観的に把握すること。そこから次のアクション — 事業の成長戦略なのか、報酬体系の見直しなのか — が見えてきます。
よくある質問(FAQ)
Q. 中小企業の社長で年収1,000万円を超えるには、会社の利益がいくら必要ですか?
古田土経営の1,314社調査によると、社長の年俸が1,000万円を超えるのは経常利益が約1,000万〜2,000万円以上の企業です。月給換算で約83万円以上が目安になります。
Q. 役員報酬は自分で自由に決められますか?
株式会社の場合、役員報酬は株主総会の決議が必要です。定期同額給与(毎月一定額)が原則で、期中の変更は原則として損金算入できません。事業年度開始から3ヶ月以内に決定するのが一般的です。
Q. 役員報酬と従業員の給与、税金の違いはありますか?
役員報酬も従業員給与も、所得税・住民税・社会保険料は基本的に同じ仕組みで課されます。ただし、役員報酬は「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」の3形態のいずれかでないと法人の損金に算入できないという法人税法上の制約があります。
Q. 役員報酬を高くしすぎるとどうなりますか?
個人の所得税率が上がります(年収900万超で税率33%、1,800万超で40%)。また、法人の社会保険料負担も増加します。そのため、役員報酬を抑えて法人に利益を残し、法人税(実効税率約30%)で処理するほうが有利なケースもあります。税理士と相談の上、最適なバランスを見つけることが重要です。
Q. 中小企業の社長の退職金はいくらくらいですか?
中小企業の経営者退職金は「最終報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率」で計算されるのが一般的です。功績倍率は社長で2.0〜3.0が相場です。たとえば月額報酬55万円で20年在任の場合、55万 × 20年 × 2.5 = 2,750万円が目安になります。
Q. 個人事業主と法人の社長、手取りはどちらが有利ですか?
年収(売上−経費)が700万〜800万円を超えるあたりから、法人化して役員報酬を受け取るほうが手取りが有利になるケースが多いとされています。ただし、法人の設立・維持コストや社会保険料の増加も考慮が必要です。
Q. 上場企業の社長の年収はいくらですか?
人事院「民間企業における役員報酬調査」(令和5年)によると、従業員500人以上の企業の社長の平均年間報酬は4,226万〜8,603万円(企業規模による)です。中小企業の社長(平均1,021万円)とは4〜8倍の開きがあります。上場企業の役員報酬については DataLabo 上場企業版チェッカー でも確認できます。
Q. 自分の報酬が適正かどうか、どうやって判断すればいいですか?
まず「同規模・同業種の社長の報酬相場」を知ることが第一歩です。資本金規模別の国税庁データや、経常利益別の社長年俸データと自社を比較してみてください。併せて DataLabo年収偏差値チェッカー で一般労働者との相対位置を把握すると、客観的な判断材料になります。
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