CAREER × DATA — 転職と年収偏差値

年収偏差値で見る転職の損益分岐点 — 属性が変わると偏差値も変わる

2026.05.25 データラボ(DataLabo) 令和7年 賃金構造基本統計調査

1. 「年収が上がったのに、なぜか負けた気がする」

転職して年収が50万円上がった。それなのに、なんとなく居心地が悪い。

こんな経験をした人は少なくありません。前職では「うちの中では高い方」と言われていたのに、新しい会社では「まあ普通かな」と扱われる。数字は上がった。でも立ち位置は下がった。

これは気のせいではありません。転職とは、年収の額面だけでなく「比較される集団」が変わる行為です。

中企業から大企業へ移れば、周囲の水準が上がります。地方から東京へ移れば、生活コストも比較対象も一変します。年収偏差値という物差しで見ると、同じ年収でも属性が変わるだけで偏差値が10以上動くことがあります。

2. 転職で変わる「3つの軸」と偏差値への影響

転職で変動する主な属性は3つあります。それぞれが偏差値に直接影響します。

企業規模 — 最大79.5千円/月の水準差

厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」によれば、企業規模による賃金差は以下の通りです。

企業規模別 月額賃金(男女計)
Monthly wage by company size — R7 wage structure survey, Table 4
大企業(1,000人〜)
385.1 千円
中企業(100〜999人)
326.2 千円
小企業(10〜99人)
305.6 千円
大企業と小企業の月額差は79.5千円。年収換算で約115万円。転職で企業規模が変われば「比較される基準」がこれだけ動きます。
出典:厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」第4表(2026年3月24日公表)

大企業と小企業の月額差は79.5千円。年収換算で約115万円です。中企業で年収480万円を得ている人が大企業に転職して年収520万円になったとしても、周囲の基準が60万円以上高い集団に入ることになります。額面は40万円上がりましたが、集団内での相対位置は下がり得ます。

業種 — 情報通信と宿泊・飲食で月額10万円差

産業別 正社員 月額賃金(上位・下位4業種)
Monthly wage by industry (regular employees) — R7 wage structure survey
電気・ガス等
453.7 千円
学術研究・専門技術
453.1 千円
情報通信業
411.0 千円
製造業
346.1 千円
医療・福祉
325.5 千円
宿泊・飲食
303.8 千円
電気・ガス業と宿泊・飲食業の月額差は149.9千円(年約217万円)。異業種転職は「比較集団の入れ替え」を意味します。
出典:厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」(2026年3月24日公表)

異業種転職は年収アップのチャンスですが、高水準の業種に入れば「同じ年収でも偏差値が下がる」という逆転現象が起きます。

都道府県 — 東京係数1.228、沖縄係数0.785

地域による賃金水準の差も大きく、年収偏差値の計算では47都道府県の地域係数を使用しています。東京の係数は1.228、沖縄は0.785。

地方から東京に転職して年収が20%上がっても、東京の基準で計算すると偏差値はほとんど変わらない、というケースがあります。逆に、東京から地方へのUターン転職で年収が下がっても、地域基準で見ると偏差値が上がることもあります。

3. 令和7年データが示す「転職の損益分岐点」

ここで、令和7年データをもとに「転職で偏差値が上がるか下がるか」の分岐点を考えてみます。

企業規模アップの損益分岐

小企業(305.6千円/月)から大企業(385.1千円/月)への転職を想定します。大企業の平均水準は小企業より月額79.5千円(年収約115万円)高いため、年収が115万円以上上がらなければ、集団内での偏差値は前職より下がる可能性があります。

CONCLUSION
企業規模アップ ≠ 偏差値アップ

企業規模をアップさせる転職は、年収の絶対額が上がっても偏差値は下がり得ます。「大企業に入れば勝ち」ではなく、その集団の中でどの位置に入るかが重要です。

30代の転職タイミング

正社員 男性 年齢別月額賃金
Monthly wage curve for regular male employees — R7 wage structure survey
25〜29歳
292.4 千円
30〜34歳
337.0 千円 +44.6
35〜39歳
374.2 千円 +37.2
40〜44歳
406.3 千円 +32.1
50〜54歳
449.2 千円
55〜59歳(ピーク)
460.7 千円
30代前半の+44.6千円/月(年約65万円)はキャリア全期間で最大の加速区間。この時期に企業規模・業種をアップさせると、年功カーブの恩恵と重なり偏差値を大きく押し上げられます。
出典:厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」第6-1表(2026年3月24日公表)

40代後半以降は在籍年数に応じた年功序列の恩恵が大きくなるため、転職による年収アップ幅が在籍継続に勝てないケースも出てきます。

4. 雇用形態の壁 — 正社員転換という「最大の転職」

転職の中でも最もインパクトが大きいのは、非正規から正社員への転換です。

令和7年データによれば、雇用形態間の賃金格差(正社員=100に対する非正規の水準)は全体で67.4%。しかも年齢とともに格差は拡大し、50〜54歳で55.7%、55〜59歳で54.8%と最大化します。

DATA
50代前半 正社員と非正規の月額差:194.9千円

厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」によれば、50〜54歳の正社員男性は449.2千円/月、非正規男性は254.3千円/月。差額は年収換算で約282万円です。同じ年齢・同じ性別でも、雇用形態が違うだけでこれだけの差が生まれます。

偏差値で見ると、正社員の中で偏差値50の人が非正規の基準で測れば偏差値70前後になることもあります。逆に、非正規で偏差値60の人が正社員に転換すると偏差値40台に下がる可能性もあります。

ただし、これは「下がったからダメ」ではありません。正社員の偏差値40台は、非正規の偏差値60台より絶対額で上です。偏差値と絶対額、両方を見る必要があります。

5. 「偏差値が下がる転職」は悪い転職か?

ここまで読んで、「偏差値が下がるなら転職しない方がいいのか」と思われた方もいるかもしれません。答えは「必ずしもそうではありません」です。

偏差値が下がっても「良い転職」のケース:

偏差値が上がっても注意すべきケース:

CONCLUSION
偏差値の上下だけで転職を判断しない

年収の絶対額、偏差値の変動、将来の昇給カーブ、雇用の安定性。複数の軸で転職先を評価することが、後悔しない意思決定につながります。

6. あなたの「転職前の現在地」を診断する

転職を検討する前に、まず今の自分の偏差値を正確に把握することが出発点です。年収の額面だけでは見えない「集団内の相対位置」を、令和7年の最新データで確認できます。

転職前に、現在地を知る
年収偏差値を診断する → 雇用形態別で診断する →
令和7年 賃金構造基本統計調査に基づく6軸診断。約1分で完了。

転職先の条件を入力して比較すれば、「属性が変わったら偏差値はどう動くか」もシミュレーションできます。

関連ツール:

7. 転職は「偏差値の引っ越し」である

転職とは、住む街を変えるのに似ています。家賃が高い街に引っ越せば、同じ収入でも「この街では普通」になります。家賃が安い街に行けば、同じ収入でも「余裕がある方」になります。

年収偏差値も同じ構造です。比較される集団が変われば、偏差値が変わる。これは良い悪いではなく、構造的な事実です。

大切なのは、この構造を理解した上で判断することです。年収の絶対額、偏差値の変動、将来の昇給カーブ、雇用の安定性。複数の軸で転職先を評価することが、後悔しない意思決定につながります。

令和7年の公的統計データは、その判断材料になります。


年収偏差値ラボについて

年収偏差値ラボは、厚生労働省の公的統計データに基づく年収・資産・退職金の偏差値診断ツールを提供しています。すべての計算は令和7年 賃金構造基本統計調査およびJ-FLEC 2025の実データを使用しており、推測値や概算値は含みません。

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