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「同属性補正係数」の正体
— 年収偏差値を作る計算式と全属性の実数値を完全公開

公開日: 2026-04-30 更新日: 2026-05-26 所要: 約 18 分

第1章:「電気ガス1.304」「東京1.228」はどう決まる?

本サイトの「年収偏差値(平均値版)」を使ったことのある方なら、HOW IT WORKS のセクションでこんな数字を目にしたかもしれません。

全国同業種:0.81〜1.30(最高=電気ガス 1.304、最低=宿泊飲食 0.814)
全国学歴別:0.84〜1.52(中卒 0.844、大学院卒 1.519)
東京都(固定):1.228

これらは 同属性補正係数と呼ばれる数値で、本サイトの偏差値計算の根幹を成しています。一見すると複雑な統計モデルから出てきそうな数字ですが、実は計算式は割り算ひとつだけです。本記事では、その計算の中身を完全公開します。

「年収診断ツール」を謳うサイトの多くが、計算ロジックを公開していません。本サイトのスタンスは真逆で、「公的統計の数字を、誰でも検算できる単純な式に通すだけ」という透明性を最重要視しています。なぜそうしているのか、その理由もこの記事で詳しくお伝えします。

この記事では、以下の内容をカバーします。

  1. 補正係数の計算式(驚くほどシンプルです)
  2. 基準となる「全国平均 340.6 千円」の正体
  3. 6 種類すべての補正係数の実数値一覧
  4. 補正係数を使った偏差値計算の実例
  5. なぜ「乗算(掛け算)」方式なのか — 加算方式との比較
  6. この方式の限界と、それでもこの方式を選ぶ理由
  7. 他の年収診断サイトとの違い

第2章:計算式は驚くほどシンプル — 割り算ひとつ

同属性補正係数の計算式は、以下の 1 行に集約されます。

同属性補正係数
  = 同属性の月額所定内給与(千円)
    ÷ 全国平均の月額所定内給与(340.6 千円)

これだけです。推測も、仮定も、複雑な統計手法も入っていません。賃金構造基本統計調査の各表から実数値を取り、全国平均で割り算するだけです。

そしてこの係数を使えば、属性別の年収を即座に計算できます。

同属性の年収換算(万円)
  = 340.6 × 補正係数 × 15.16 ÷ 10

※ 15.16 = 月額×12 + 賞与の年収換算係数。令和7年 賃金構造基本統計調査の「きまって支給する現金給与額」と「年間賞与その他特別給与額」から、男女計の実データをもとに算出した値です。

たとえば東京都の補正係数 1.228 を当てはめてみましょう。

東京都の平均年収(換算)
  = 340.6 × 1.228 × 15.16 ÷ 10
  = 約 634 万円

この一連の計算には、推測値も独自の重み付けも入っていません。賃構調の公表値から電卓ひとつで検算可能です。

第3章:基準となる「全国平均 340.6 千円」の正体

計算の基準となる 340.6 千円は、令和7年 賃金構造基本統計調査が公表する「男女計・年齢計・全雇用者の月額所定内給与」です。

項目
調査名賃金構造基本統計調査(賃構調)
所管厚生労働省
調査年令和7年(2025年6月分賃金)
公表日令和8年(2026年)3月24日
調査対象常用労働者 10 人以上の事業所(約 84,000 事業所)
回答労働者数約 127 万人
男女計 月額所定内給与340.6 千円
男性 月額373.4 千円
女性 月額285.9 千円
正社員 月額358.8 千円
非正規 月額241.7 千円

これが日本人労働者の「平均像」を表す最も信頼できる数字です。約 84,000 事業所、127 万人を対象とする国の基幹統計であり、民間の転職サイトが保有するデータとは規模も網羅性も格段に違います。

本サイトのすべての偏差値計算は、この 340.6 千円を絶対基準として組み立てられています。

FACT-CARD 1 — 全国平均の規模感
月額 340.6 千円 = 年収換算 約 520 万円
賃金構造基本統計調査は約 84,000 事業所・127 万人規模の基幹統計です。転職サイトの自社会員データ(数万〜数十万人)とは桁が違います。この 340.6 千円が本サイトの全計算の出発点であり、すべての補正係数はこの数字で割って算出されています。
出典:賃構調 R7 結果の概況 第 1 表(2026 年 3 月 24 日公表)

第4章:6 種類の補正係数 — すべての実数値

本サイトの「年収偏差値(平均値版)」では、6 つのベース(全国・業種・年代/性別・規模・学歴・都道府県)で偏差値を計算します。それぞれの補正係数を、賃構調 R7 の実数値とともに、すべて公開します。

① 業種別(賃構調 R7 第5-1表 — 産業別・男女計)

業種月額(千円)計算式係数年収換算
電気・ガス・熱供給・水道業444.0444.0 ÷ 340.61.304644 万
学術研究・専門・技術サービス業443.7443.7 ÷ 340.61.303643 万
金融業・保険業437.0437.0 ÷ 340.61.283633 万
情報通信業406.0406.0 ÷ 340.61.192588 万
建設業365.0365.0 ÷ 340.61.072530 万
製造業329.6329.6 ÷ 340.60.968478 万
医療・福祉315.7315.7 ÷ 340.60.927458 万
運輸業・郵便業302.0302.0 ÷ 340.60.887438 万
その他サービス業284.7284.7 ÷ 340.60.836413 万
宿泊業・飲食サービス業277.2277.2 ÷ 340.60.814402 万

業種間の格差は最大 1.60 倍(電気ガス 444.0 千円 ÷ 宿泊飲食 277.2 千円)です。年収換算で約 242 万円の差がつきます。同じ年齢・学歴・地域の人でも、所属する業種が違うだけでこれだけの差が生じるわけです。

図 1:業種別補正係数(賃構調 R7 第5-1表・男女計)
電気・ガス
1.304
学術・専門技術
1.303
金融・保険
1.283
情報通信
1.192
建設
1.072
---- 全国平均 ----
1.000
製造
0.968
医療・福祉
0.927
サービス業
0.836
宿泊・飲食
0.814
※ 金色 = 係数 1.2 以上 / 青 = 1.0〜1.2 / グレー = 1.0 未満。バー幅は係数 0.814〜1.304 の範囲を比例表示
出典:厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」第5-1表(産業別・男女計)

② 性・年齢階級別(賃構調 R7 第2表)

区分月額(千円)係数年収換算
〜19歳 男性212.50.624308 万
〜19歳 女性201.40.591292 万
20-24歳 男性240.10.705348 万
25-29歳 男性290.50.853422 万
30-34歳 男性330.40.970479 万
30-34歳 女性283.20.831411 万
40-44歳 男性397.51.167577 万
45-49歳 男性420.71.235610 万
50-54歳 男性437.51.284634 万
55-59歳 男性445.61.308646 万

年齢の影響度は最大 2.14 倍(55-59歳男性 445.6 千円 ÷ 〜19歳男性 212.5 千円、正社員男性内比較)。6 つの属性のなかで最もインパクトが大きい要素ですが、残念ながら個人の意思ではコントロールできません。だからこそ、同年齢・同性別の集団内で比較する偏差値の意味が際立ちます。

③ 企業規模別(賃構調 R7 第4表 — 企業規模別・男女計)

規模月額(千円)計算式係数年収換算
大企業(1,000 人以上)385.1385.1 ÷ 340.61.131558 万
中企業(100〜999 人)326.2326.2 ÷ 340.60.958473 万
小企業(10〜99 人)305.6305.6 ÷ 340.60.897443 万

大企業と小企業の差は 1.26 倍。月額で約 8 万円、年収換算で約 115 万円の差です。決して小さくありませんが、業種や学歴と比べると中程度のインパクトにとどまります。

④ 学歴別(賃構調 R7 第3表 — 学歴別・男女計)

学歴月額(千円)計算式係数年収換算
中学卒287.6287.6 ÷ 340.60.844417 万
高校卒297.2297.2 ÷ 340.60.873431 万
専門学校卒313.7313.7 ÷ 340.60.921455 万
高専・短大卒321.2321.2 ÷ 340.60.943466 万
大学卒396.3396.3 ÷ 340.61.164575 万
大学院卒517.4517.4 ÷ 340.61.519750 万

学歴の最大格差は 1.80 倍(大学院卒 517.4 千円 ÷ 中学卒 287.6 千円)。月額で 22.0 万円、年収換算で 333 万円もの差がつきます。特に大学院卒の係数 1.519 は、すべての属性を通じて最大級の値です。

⑤ 都道府県別(賃構調 R7 第1-10表 参考表1 — 都道府県別・男女計)

都道府県月額(千円)計算式係数年収換算
東京都418.3418.3 ÷ 340.61.228607 万
神奈川県368.5368.5 ÷ 340.61.082535 万
大阪府358.7358.7 ÷ 340.61.053521 万
愛知県357.5357.5 ÷ 340.61.050519 万
福岡県314.4314.4 ÷ 340.60.923456 万
北海道297.0297.0 ÷ 340.60.872431 万
沖縄県267.3267.3 ÷ 340.60.785388 万
青森県263.9263.9 ÷ 340.60.775383 万

東京と最低県の格差は 1.59 倍。同じ仕事をしていても、住んでいる地域だけで年収に大きな差がつく現実がここにあります。

すべての数字が「実数値 ÷ 340.6」というシンプルな構造

6 種類の属性、合計 50 個以上の補正係数 — そのすべてが、賃金構造基本統計調査の公表値を全国平均で割っただけです。本サイトの偏差値計算には、推測値も主観的判断も入っていません。誰でも統計局の表を見れば検算できます。

第5章:補正係数を使った偏差値計算の実例

では実際に、これらの係数を使って偏差値を計算してみましょう。例として、こんな人物を想定します。

30 歳・男性・正社員・大学卒・東京都・大企業・情報通信業・年収 600 万円

ステップ 1:6 ベースの「同属性平均年収」を計算

まず、各属性の補正係数を使って「同じ属性の人の平均年収」を算出します。

ベース係数計算式同属性平均
① 全国1.000340.6 × 1.000 × 15.16 / 10516 万
② 30-34歳男性0.970340.6 × 0.970 × 15.16 / 10501 万
③ 情報通信業1.192340.6 × 1.192 × 15.16 / 10615 万
④ 大企業1.131340.6 × 1.131 × 15.16 / 10584 万
⑤ 大学卒1.164340.6 × 1.164 × 15.16 / 10601 万
⑥ 東京都1.228340.6 × 1.228 × 15.16 / 10634 万

ステップ 2:偏差値を計算

偏差値の計算式は以下の通りです(CV = 変動係数 = 0.37)。

偏差値 = 50 + (年収 - 同属性平均) ÷ (同属性平均 × 0.37) × 10

この式の意味を言葉にすると、「あなたの年収が同属性の平均からどれくらい離れているかを、標準偏差(平均 × 0.37)の何倍分かで測り、偏差値 50 を基準に換算する」ということです。

年収 600 万円を各ベースに当てはめてみます。

ベース同属性平均差額偏差値位置
① 全国516 万+8454.4上位 33%
② 30-34歳男性501 万+9955.3上位 30%
③ 情報通信業615 万-1549.3業種内ほぼ平均
④ 大企業584 万+1650.7規模内 平均上
⑤ 大学卒601 万-150.0学歴内 平均
⑥ 東京都634 万-3448.6東京内 やや下

同じ年収 600 万円でも、見るベースで偏差値は 48.6 〜 55.3(約 7 ポイント差)。これが本サイトの 6 ベース偏差値モデルの本質です。

図 2:年収 600 万円の 6 ベース偏差値 — 同じ年収でもベースによって意味が変わる
② 30代男性
55.3
① 全国
54.4
④ 大企業
50.7
⑤ 大学卒
50.0
③ 情報通信
49.3
⑥ 東京都
48.6
※ 中央の縦線 = 偏差値 50(同属性平均)。緑 = 50 以上 / 青 = ほぼ平均 / 赤 = 50 未満
※ 年収 600 万円は全国では上位 33% だが、東京の情報通信業では「普通」
出典:賃構調 R7 各表より本サイト算出、CV = 0.37

そして重要なのは、これらの計算がすべて「補正係数 = 賃構調実数値 ÷ 340.6」というシンプルな式から派生しているということです。誰でも電卓ひとつで検算できます。

FACT-CARD 2 — 6 ベースの威力
同じ年収 600 万円で、偏差値は 48.6 〜 55.3 の幅
年収 600 万円は全国平均(約 520 万円)から見ると上位 33% ですが、東京都平均(約 634 万円)から見るとやや下回ります。「1 つの偏差値」では見えない多面的な位置付けを、6 ベースの同時算出で可視化しているのが本サイトの設計です。
モデル事例:30 歳男性 / 大卒 / 大企業 / 東京 / 情報通信業 / CV = 0.37

第6章:なぜ「乗算(掛け算)」方式なのか — 加算方式との比較

補正係数が「割り算ひとつ」で算出されることはご理解いただけたかと思います。ここで一歩踏み込んで、なぜこの方式(乗算)を選んだのかを説明します。

加算方式の問題点

補正のやり方には、大きく分けて 2 つのアプローチがあります。

  1. 加算方式:基準年収 + 調整額(例:全国平均 + 東京加算 78 万円)
  2. 乗算方式:基準年収 × 補正係数(例:全国平均 × 1.228)

一見すると加算方式の方がシンプルに見えますが、大きな問題があります。

加算方式の例(東京都の場合)
  東京の月額 418.3千円 - 全国平均 340.6千円 = +77.7千円

この +77.7 千円は…
  年収 300 万円の人にとっては 年収の 25.9%
  年収 800 万円の人にとっては 年収の 9.7%

同じ「東京で働いている」という事実が、低年収層には大きく、高年収層には小さく効いてしまいます。これは直感にも反しますし、統計的にも不正確です。

乗算方式が適切な理由

一方、乗算方式では東京の効果は常に「1.228 倍」です。

乗算方式の例(東京都 係数 1.228)
  年収 300 万円 × 1.228 = 368 万円 差額 +68 万
  年収 800 万円 × 1.228 = 982 万円 差額 +182 万

年収水準に応じて差額が比例的にスケールします。これは賃金の現実とも合致しています。東京の大企業の管理職は全国平均の管理職より「比率として」高い給与をもらっているのであり、「固定額だけ上乗せ」されているわけではありません。

賃金データは本質的に 比率的なスケールで変動します。基準額が変わっても、「東京は全国平均より 22.8% 高い」という関係は安定しています。このため、乗算(比率)方式の方が統計的に適切であり、本サイトではこちらを採用しています。

図 3:加算方式 vs 乗算方式 — 東京都の補正効果の比較
加算方式(+77.7 千円固定)
年収 300 万
+25.9% の効果
年収 800 万
+9.7% の効果
乗算方式(×1.228 固定)
年収 300 万
+22.8% の効果
年収 800 万
+22.8% の効果
※ 赤 = 加算方式(年収水準で効果が不均等) / 青 = 乗算方式(常に同比率)
※ 乗算方式は年収水準に依存しない一貫した補正が可能

数式で整理すると

偏差値の計算式全体を、補正係数を使って書き下してみましょう。

偏差値 = 50 + (年収 - 340.6 × C × M2A / 10) ÷ (340.6 × C × M2A / 10 × 0.37) × 10

  C = 補正係数(= 属性の月額 ÷ 340.6)
  M2A = 月→年 換算係数(男女計 15.16)
  0.37 = 変動係数(CV)

この式で C に入る数字だけが属性によって異なります。340.6 も 15.16 も 0.37 も定数です。つまり、偏差値を決めるのは「あなたの年収」と「たった 1 つの係数 C」だけということになります。

第7章:補正係数の限界 — 何ができて、何ができないのか

ここまで補正係数のシンプルさと強みを説明してきましたが、この方式にも限界はあります。限界を隠さず開示することも、データ透明性の一部です。

限界 1:属性間の交互作用を捉えきれない

補正係数は各属性を独立に扱っています。たとえば「東京 × 情報通信業」のシナジー(東京の IT 企業は地方の IT 企業より賃金プレミアムが大きい可能性)は、現在のモデルでは考慮されていません。

仮に交互作用を入れるなら、47 都道府県 × 16 業種 × 10 年齢階級 × 3 企業規模 × 6 学歴 × 2 性別 = 約 151,000 通りのセルが必要になります。賃構調の調査規模(127 万人)でも、各セルのサンプル数は平均 8 人程度に落ちてしまい、統計的に信頼できる値は得られません。

独立に扱うことは、データ精度を維持するための意図的な設計判断です。

限界 2:CV(変動係数)が全属性共通

本サイトでは CV = 0.37 を全属性で統一しています。しかし実際には、業種によって年収のばらつきは異なります。金融業は成果報酬によるばらつきが大きく、公務員はばらつきが小さい、といった違いがあるでしょう。

属性別の CV を使えばより精密な偏差値になりますが、賃構調は「月額の分散」を公表していないため、正確な属性別 CV を算出できません。公表されていないデータを推測で補うことは、本サイトのポリシーに反します。

限界 3:個別企業や個人レベルの外れ値は反映されない

補正係数は「属性内の平均値」を基準としています。たとえば「情報通信業」の平均は月額 406.0 千円ですが、GAFAM の日本法人と中小 SIer では当然大きな差があります。こうした企業レベルの分散は、本モデルの適用範囲外です。

FACT-CARD 3 — 設計上のトレードオフ
交互作用を入れると 151,000 セル / セル平均 8 人
47 都道府県 × 16 業種 × 10 年齢階級 × 3 規模 × 6 学歴 × 2 性別 = 約 151,000 通り。127 万人の調査でもセルあたり平均 8 人しか残りません。精緻化すればするほどサンプル不足で精度が下がるという、統計の基本的なトレードオフです。本サイトは「属性独立 × 検算可能」を選びました。
設計判断:推測を排除し、公表データの直接利用に限定

限界があっても、この方式を選ぶ理由

上記の限界はすべて、推測値を一切入れないというポリシーの代償です。交互作用を入れるなら推測が必要。属性別 CV を使うなら非公表データの推定が必要。そのどちらも、「誰でも検算できる」という本サイトの根本思想と矛盾します。

限界を知ったうえで使うことが、データリテラシーの一部です。本サイトの偏差値は「あなたの正確な順位」ではなく、「公的統計から導ける最も透明な位置付け」として読んでください。

第8章:他の年収診断サイトとの違い — なぜ「データの透明性」を重視するのか

年収診断ツールを提供するサイトは他にもいくつか存在します。それらと本サイトの根本的な違いは何でしょうか。

① 公的統計の単純な再構成こそが、最高精度

「独自のアルゴリズム」「AI による高精度推定」を謳うサイトは数多くありますが、個人の年収データを大量に保有している組織は、官公庁以外には存在しません。賃金構造基本統計調査は約 84,000 事業所、127 万人を対象とする巨大調査です。これより精度の高い民間データは存在しないのです。

であれば、最も価値ある診断ツールは「公的統計の数字を、最小限の加工で見える化する」ものです。複雑な機械学習を装っても、元データの精度はむしろ落ちます。

② 推測・主観的判断は精度を毀損する

「補正係数を 0.05 上方修正した」「業種傾向に沿って独自に調整」 — こうした介入は、必ず精度を毀損します。なぜなら賃構調の数字は、すでに最大規模のサンプル調査の集計結果だからです。それを「修正」する正当性は、データサイエンティストにもありません。

本サイトの補正係数は、賃構調 R7 の実数値を全国平均 340.6 千円で割っただけ。誰が計算しても同じ値になります。

③ 検証可能性こそがユーザーへの誠実さ

「どうやって計算したか、誰でも電卓で確認できる」 — この透明性こそが、本サイトの最大のコミットメントです。本記事を読んだあなたは、もう本サイトの偏差値が 実数値の割り算と正規分布の足し算だけで構成されていることを知っています。これ以外の「何か」は、何も入っていません。

④ データの鮮度

競合サイトのなかには、数年前の国税庁データや旧年度の賃構調をそのまま使い続けているところもあります。本サイトでは、賃金構造基本統計調査の最新版が公表されるたびに、1 か月以内にすべての補正係数を更新しています。現在は 令和7年版(2026 年 3 月 24 日公表)を使用しています。

本サイトの 3 つのデータ原則

原則1:推測値・主観的調整は一切入れない。賃構調・J-FLEC 等の公的統計の実数値のみ使用しています。

原則2:計算式はすべて公開。割り算と正規分布の組合せだけで完結しています。

原則3:データ年度は最新を即時反映。令和7年データは公表(2026年3月24日)から1か月以内にすべての係数を更新しました。

第9章:補正係数の年次変動 — 毎年どのくらい変わるのか

補正係数は賃構調の公表値から機械的に算出されるため、調査年度が変われば値も変わります。では、実際にどの程度変動するものなのでしょうか。

構造的に安定している属性

都道府県や学歴の補正係数は、年度間の変動が比較的小さいことが知られています。東京都の賃金が全国平均を大きく上回るという構造は、1 年や 2 年では変わりません。同様に、大学院卒と高校卒の賃金格差も短期間では縮小しにくい構造的な特性です。

変動が起きやすい属性

一方、業種別の補正係数は経済環境の影響を受けやすく、相対的な変動が大きくなることがあります。たとえば、コロナ禍(2020-2021 年)には宿泊・飲食業の月額が大きく落ち込み、情報通信業が相対的に伸びました。こうした外的ショックは業種別係数に反映されます。

なぜ毎年更新するのか

「毎年ほとんど変わらないなら、更新しなくてもいいのでは?」という疑問があるかもしれません。しかし、「最新データを使っている」という事実そのものが信頼性の証です。

仮に令和 5 年のデータを使い続けたとして、ユーザーは「この数字はいつのものか」を判断できません。本サイトでは、すべてのページで「令和7年 賃金構造基本統計調査」と出典を明記し、データの鮮度を保証しています。

第10章:あなたの 6 ベース偏差値を診断する

本記事で公開した補正係数を使った偏差値計算を、あなた自身の属性で試してみませんか。本サイトの「年収偏差値(平均値版)」は、本記事の数式をそのままアプリ化したものです。手計算する必要はありません。

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性別・年齢・学歴・業種・都道府県・企業規模・年収を入力すれば、本記事と完全同一の補正係数 + 正規分布モデルで 6 ベース偏差値が同時算出されます。約 1 分。すべての計算ロジックは HOW IT WORKS で公開しています。

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ほかにも、切り口の異なる診断ツールを用意しています。

まとめ:シンプルな割り算から生まれる、本当の年収偏差値

今回のポイント:

  1. 同属性補正係数 = 賃構調 R7 実数値 ÷ 340.6 千円 という割り算ひとつで算出されています
  2. 6 種類の属性(業種・性年齢・規模・学歴・都道府県・全国)について、合計 50 以上の係数すべてを本記事で公開しました
  3. 偏差値計算 = 50 + (年収 - 同属性平均) ÷ (平均 × 0.37) × 10 というシンプルな数式です
  4. 乗算方式を採用しているのは、賃金が比率的にスケールするためです。加算方式では低年収層と高年収層で効果が不均等になります
  5. 交互作用や属性別 CV を入れないのは、推測を排除し検算可能性を保つための意図的な設計判断です
  6. 本サイトには 推測・主観的調整は一切入っていません
  7. 誰でも電卓で検算できる — それがデータの透明性であり、ユーザーへの誠実さです

「複雑な独自アルゴリズム」を売り物にする年収診断サイトに違和感を覚えたことがあるなら、本記事はその違和感の正体を言語化できたかもしれません。本当に信頼できるのは、「公的統計のシンプルな再構成」です。それ以上でも以下でもありません。

これが、本サイト「年収偏差値ラボチェッカー」の根本的なスタンスです。


よくある質問(FAQ)

補正係数とは何ですか?
補正係数とは、特定の属性(業種・学歴・都道府県など)に属する集団の平均月額賃金を、全国平均月額(340.6千円、令和7年 賃金構造基本統計調査)で割った値です。たとえば東京都の月額 418.3 千円を 340.6 千円で割ると 1.228 になります。この係数を使うことで、全国平均を基準とした同属性の平均年収を算出できます。
なぜ乗算(掛け算)方式で補正するのですか?
賃金データは比率的なスケールで変動するためです。たとえば東京の賃金が全国平均より 22.8% 高いという関係は、基準額が変わっても比率として安定しています。加算(+○○万円)方式では低年収層と高年収層で効果が不均等になりますが、乗算方式なら年収水準に依存しない一貫した補正が可能です。
補正係数はどのデータから算出していますか?
すべて厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」(2026年3月24日公表)の公表値です。業種は第5-1表、性・年齢階級は第2表、企業規模は第4表、学歴は第3表、都道府県は第1-10表 参考表1を使用しています。推測値や独自調整は一切含まれていません。
CV(変動係数)0.37 とは何ですか?
CV(Coefficient of Variation:変動係数)は、標準偏差を平均で割った比率です。0.37 という値は、日本の年収分布のばらつきが平均の 37% 程度であることを意味しています。偏差値計算では標準偏差 = 同属性平均 × 0.37 として使用し、年収と偏差値の対応を決める尺度になります。
同じ年収でも属性によって偏差値が違うのはなぜですか?
偏差値は「その集団の中でどの位置にいるか」を示す指標だからです。年収 600 万円は全国平均(約 520 万円)と比べると上位ですが、東京都の平均(約 634 万円)と比べるとほぼ真ん中です。同じ年収でも比較基準となる集団が異なれば、偏差値も変わります。本サイトの 6 ベース偏差値はこの多面性を可視化するために設計されています。
補正係数方式にはどのような限界がありますか?
主に 3 つの限界があります。(1) 各属性を独立に扱うため、属性間の交互作用(たとえば東京 × 情報通信業のシナジー)は捉えきれません。(2) 全属性で CV = 0.37 を仮定しており、業種によるばらつきの差は吸収できません。(3) 補正係数は属性内の平均値を基準とするため、個別企業・個人レベルの外れ値は反映されません。ただしこれらは意図的な設計判断であり、推測値を排除して検算可能性を保つための代償です。
他の年収診断サイトと何が違いますか?
最大の違いは透明性です。多くの年収診断サイトは「独自アルゴリズム」を謳い計算ロジックを非公開にしていますが、本サイトは補正係数の全数値・計算式・出典表を完全公開しています。使用データはすべて賃金構造基本統計調査(約 84,000 事業所・127 万人規模)の公表値であり、誰でも厚生労働省のサイトで検算できます。
補正係数は毎年変わりますか?
はい。賃金構造基本統計調査は毎年実施・公表されるため、補正係数も毎年更新されます。本サイトでは公表後 1 か月以内にすべての係数を更新する方針です。現在は令和7年(2025年調査・2026年3月24日公表)のデータに基づいています。