WAGE CENTER OF GRAVITY — 年齢×生涯年収の重心構造

年齢と生涯年収で見る「日本の賃金重心」— ピークは55歳、重心は45歳の意味

2026.05.25 データラボ(DataLabo) 令和7年 賃金構造基本統計調査

1. 「50代が一番稼ぐ」は正しい。しかし、それは半分の事実

日本の正社員の賃金ピークは55〜59歳。男性正社員なら月額460.7千円。これは令和7年 賃金構造基本統計調査が示す事実です。

ならば、日本の経済的な「重心」は50代にあるのでしょうか。

答えは「いいえ」です。

ピーク年収と、生涯所得の重心は違います。物理学の重心と同じで、「最も重い地点」と「全体のバランスの中心」は一致しません。マンションの最上階が一番高い位置にあっても、建物全体の重心はもっと低い階にあるのと同じです。

令和7年データから「賃金重心」を計算すると、驚くべき数字が見えてきます。

2. 賃金重心とは何か — 計算方法

「賃金重心」は、各年齢帯の月額賃金にその期間(年数)を掛けた値で加重平均を取った年齢です。数式で書くと以下の通りです。

賃金重心 = Σ(年齢中央値 × 月額 × 年数)÷ Σ(月額 × 年数)

各年齢帯の「稼ぎの重み」を合計し、その重心がどの年齢にあるかを算出します。

ピーク(最大値)は「最も高い山の頂上」を示しますが、重心は「山全体の質量分布の中心」を示します。低い山でも裾野が広ければ、重心はそちらに引っ張られます。

20代〜30代の「低いが長い裾野」が、50代のピークを引き下げるのです。

3. 令和7年データで計算する「日本の賃金重心」

正社員(男女計)の年齢別月額データを使い、賃金重心を計算します。

正社員 年齢別月額と賃金重心(男女計)
Wage by age with center of gravity marker — R7 data, Table 6-1
年齢帯
月額
千円
偏差値
20-24
247.5
41.8
25-29
285.0
44.6
30-34
321.1
47.3
35-39
352.6
49.7
40-44
379.0
51.7
重心→ 45-50
395.6
53.0
50-54
412.7
54.3
ピーク→55-59
424.2
55.2
60-64
366.2
50.8
ピーク(55-59歳 424.2千円)と重心(約45歳)には10年のギャップがあります。20〜30代の長い蓄積期間が重心をピークより若い方向に引き下げています。
出典:厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」第6-1表(2026年3月24日公表)。正社員・正職員 男女計。偏差値は全国平均(男女計 340.6千円/月、年収換算516万円)を基準にCV=0.37の正規分布で算出した参考値。
PEAK
55
月額が最大になる年齢帯
(55-59歳 424.2千円)
CENTER OF GRAVITY
45
生涯所得の加重平均年齢
(全体のバランスの中心)
GAP
10
ピークと重心のズレ
(20-30代の蓄積が原因)
DATA
賃金重心 ≈ 45歳(正社員 男女計)

厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」の年齢帯別月額(正社員・男女計)を用い、各5歳帯の中央年齢×月額×期間で加重平均を算出。ピーク(55-59歳 424.2千円/月)より約10年若い位置に重心があります。

4. 正社員 vs 非正規 — 重心の形が根本的に違う

同じ「重心」でも、正社員と非正規では構造がまったく異なります。

正社員 vs 非正規 — 賃金重心の構造比較
Center of gravity comparison: regular vs non-regular — R7 data
年齢帯正社員 男女計非正規 男女計差額
20-24247.5203.544.0
30-34321.1233.887.3
40-44379.0230.6148.4
50-54412.7229.7183.0
55-59(正社員ピーク)424.2232.5191.7
60-64366.2279.986.3
正社員は急勾配の山型カーブ → 重心は山の中腹(約45歳)に位置します。
非正規は30代以降ほぼ水平 → 重心は同じ約44歳ですが、「高い山の中腹」と「平地の中央」ではまったく意味が異なります。
出典:厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」第6-1表(2026年3月24日公表)。単位:千円/月。

正社員の重心45歳は「急な山の中腹」です。重心の前後で賃金が大きく変わるため、30代の選択が重心以降の高度を決めるレバーになります。

非正規の重心約44歳は「平地の中央」です。どの年齢帯でも230千円前後で横ばいのため、重心の位置に関係なく「景色が変わらない」構造です。50代で格差が183.0千円(年約265万円)に開くのは、正社員の山が高くなるためであり、非正規の平地が下がるからではありません。

5. 男女で異なる重心の高度

賃金重心は男女でも異なります。重心の「位置」(年齢)は大きく変わりませんが、重心の「高度」(金額水準)が異なります。

正社員 男女別 — ピーク月額と賃金カーブ
Peak wage and curve shape by gender — R7 data
男性正社員 女性正社員
25-29
292.4 / 275.3
35-39
374.2 / 307.2
45-49
429.7 / 327.4
55-59
460.7 / 339.1
男性正社員のピーク(460.7千円)と女性正社員のピーク(339.1千円)の差は121.6千円/月(年約176万円)。
男女間賃金格差(女/男=100)は76.6。重心の高度差は、キャリア全期間を通じた累積差になります。
出典:厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」第6-1表(2026年3月24日公表)。単位:千円/月。

男性正社員のカーブは急勾配で、25-29歳(292.4千円)から55-59歳(460.7千円)まで1.57倍に伸びます。一方、女性正社員は275.3千円から339.1千円で1.23倍。女性の賃金カーブは傾きが緩やかなため、重心とピークのギャップが小さいという特徴があります。

6. 30代は「重心の手前」— だから最も効く

賃金重心が45歳にあるということは、30代はまだ重心の手前にいるということです。

重心の手前での選択は、重心以降の軌道を大きく変えます。30代前半で企業規模や業種を変えれば、重心以降の年功カーブの傾きそのものが変わるからです。

INSIGHT
重心の手前 = レバレッジが最大

30代前半(重心まで約12年)の選択は、残りの勤労期間全体に影響します。転職・昇格・資格取得などの意思決定は、重心に近づくほど「残りの面積」が小さくなるため、効果が減衰します。

逆に、50代は重心の向こう側です。ピーク年収に到達していても、「残りの面積」は限られています。だからこそ、50代以降は「年収偏差値を上げる」よりも「資産偏差値を守る」フェーズに入ります。

あなたは重心の手前か、向こう側か
年収偏差値を診断 → 雇用形態で比較 →
重心の手前にいる30代は、属性を変えて何度でもシミュレーション。重心の向こう側にいる50代は、資産偏差値も併せて確認。

7. 賃金重心という視点が変えるもの

「50代が一番稼ぐ」は事実です。しかしそれは、山の頂上が最も高いと言っているに過ぎません。

賃金重心という視点を持つと、見え方が変わります。

令和7年の公的統計データは、あなたのキャリアの重心を知るための座標系です。

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年収偏差値ラボについて

年収偏差値ラボは、厚生労働省の公的統計データに基づく年収・資産・退職金の偏差値診断ツールを提供しています。すべての計算は令和7年 賃金構造基本統計調査およびJ-FLEC 2025の実データを使用しており、推測値や概算値は含みません。

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