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【令和7年最新】年収が上がる 5 つのタイミング
— 2025春闘 5.25% から転職・昇進まで徹底比較

公開日: 2026-05-12 所要: 約 8 分

給与明細を眺めていて、ふと手が止まる瞬間がある。「自分の年収は、いつ、何によって上がるのだろうか」と。

同期の話を聞けば、誰かは 4 月の昇給で月 2 万円増えたと言い、別の誰かは転職で年収 80 万円アップしたと言う。役職に上がった先輩は突然手取りが跳ね上がり、長く勤めるベテランは黙々と年功で積み上げている。すべてが「年収が上がる」という同じ言葉で語られるのに、起こっているメカニズムはまったく違う。

問いを正確に言い換えるなら、「年収を動かす タイミング は、いったい何種類あり、それぞれどのくらいのインパクトを持つのか」となる。

本記事は、令和 7 年 賃金構造基本統計調査(厚生労働省、2026 年 3 月 24 日公表)と、雇用動向調査 令和 6 年(厚生労働省)、そして連合 2025 春闘 最終集計の 3 つの公的データだけを使って、年収が上がる 5 つのタイミングを 1 枚の地図に描く試みである。曖昧な体感を、公的統計の解像度で塗り直していく。

第1章:年収を動かす 5 つのタイミング — 全体俯瞰

結論から提示する。日本の会社員の年収を動かしているのは、原則として次の 5 つのタイミングだ。

#タイミング性質主な公的データ
14 月(定期昇給 + 春闘ベア)全雇用者に毎年訪れる、最も確実な上昇機会連合 春闘最終集計
2賞与(夏・冬)月給とは別軸、年収全体に効くが「ベース」は変わらない賃構調 年間賞与額
3昇進・昇格個人差大、職能等級が 1 段上がる賃構調 役職別賃金
4転職上がる人と下がる人がほぼ拮抗、自己選択の賭け雇用動向調査
5加齢効果静かに、しかし確実に積み上がる年功賃構調 年齢階級別賃金

注目すべきは、この 5 つが「確実性」と「金額インパクト」で性質を大きく異にする点である。4 月の定期昇給は確実だが 1 回あたりの金額は数千円から 2 万円程度に収まる。一方で昇進・転職は金額インパクトが大きいが、訪れるかどうか、上がるか下がるかが個人に大きく依存する。

つまり、年収を意識的に上げたい人は「自分が今どのタイミングのフェーズにいるか」「次に来るのはどれか」を見極める必要がある。続く 3 章以降では、5 つを順に分解していく。

第2章:4 月という分岐点 — 定期昇給 + 春闘 5.25% の威力

最も多くの雇用者に毎年訪れるのが、4 月の昇給である。そして 4 月の昇給は、性質の異なる 2 つの要素から構成されていることをまず押さえたい。

両者を合計したのが、毎年話題になる「春闘 賃上げ率」だ。

2025 春闘の確定値

FACT-CARD 1 — 2025 春闘 連合最終集計
全体 5.25% / 中小 4.65% / 34 年ぶり高水準
全体平均賃上げ率 5.25%(うちベア分 3.70%、定昇分 1.55%)、中小企業(組合員 300 人未満)4.65%。1991 年の 5.66% 以来 34 年ぶりの高水準で、ベア 3.70% が単独で 3% を超えたのも 1990 年代以来。
出典:連合「春季生活闘争 2025 年春闘」第 7 回(最終)回答集計、2025 年 7 月 3 日公表

連合の最終集計は、2025 年 4 月から各企業の給与に反映され、つまり今この瞬間、すべての対象労働者の月給に既に乗っている。これは 5 月の給与明細を見比べれば確認できる。

4 月の威力を相対化する

5.25% という数字は、近年の春闘では破格である。2010 年代の大半は 2% 前後で推移していた。ベア 3.70% が単独で 3% を超えたのは 1990 年代以来であり、これはバブル崩壊後の長い賃金停滞からの転換点を示唆する数字でもある。

ただし、注意すべきことが 2 つある。第 1 に、5.25% は労働組合のある企業の集計値であり、非組合・小規模事業所では同水準とは限らない。第 2 に、「定昇 + ベア」の合計値であるため、個人の昇給額が必ず 5.25% になるわけではない。定昇分は等級によって変動し、ベア分は全員に乗る。

それでも、4 月という一点に 全員分の昇給原資が集中して降ってくる構造 は他のタイミングにはない強みである。年収を上げる「最も確実なタイミング」は、間違いなく 4 月だ。

「組合のない企業」にも届くのか?

日本の労働組合組織率は 16.2%(厚生労働省「令和 6 年 労働組合基礎調査」)にすぎず、8 割超の労働者は組合のない環境で働いている。「春闘は大企業の組合の話で、自分には関係ない」と感じる読者がいるのは自然な反応だ。

しかし、公的データは波及効果の存在を明確に示している。

FACT-CARD 2 — 2025 年 中小・非組合員への賃上げ波及
組合あり中小 4.65% / 100 人以上組合の有無問わず 4.1% / 最低賃金 +66 円
連合 中小集計(組合あり、300 人未満)4.65%(33 年ぶり高水準)。厚労省 賃金引上げ等の実態に関する調査 R6(常用 100 人以上、組合の有無問わず)平均改定率 4.1%(前年 3.2%)。2025 年度 最低賃金 全国加重平均 1,121 円(前年 1,055 円から +66 円、過去最大引上げ幅、全 47 都道府県 1,000 円超え、2025 年 10 月以降順次施行)。
出典:厚生労働省(2024-2025 年公表)、連合(2025 年 7 月公表)

組合のある中小は大企業 5.25% との差が 0.60pt まで縮まっている。組合なし中小も「賃金相場の参照値」として春闘結果を見て賃上げを実施しており、100 人以上の組合なし含む調査でも平均 4.1% の改定が実施された。最低賃金近傍で働く層には、+66 円という 直接の底上げ が届く。

ただし、「波及はある」と「同水準」はイコールではない。組合の有無、企業規模、業界収益、価格転嫁の進捗で上昇幅は階層化し、一般的には 大企業 5.25% > 組合あり中小 4.65% > 100 人以上組合の有無問わず 4.1% > 小規模・零細はさらに下 という構造が見える。

つまり「春闘は大企業の話で、中小には関係ない」という認識は 半分正しいが、半分は誤り というのが公的データの示す現実だ。

4 月後のあなたの偏差値を診断

2025 春闘 5.25% が反映された後の現在地を、令和 7 年 賃金構造基本統計調査の同属性データと比較できます。性別・年齢・学歴・企業規模・業種・都道府県の 6 属性で偏差値が出ます。

第3章:昇進・昇格 — 部長 635.8 千円が示す職位の段差

4 月の昇給が「全員に乗る底上げ」だとすれば、昇進・昇格は「段差」である。役職が 1 段上がった瞬間、月給は階段状に跳ね上がる。

令和 7 年 賃金構造基本統計調査(第 8 図 役職別賃金)は、この段差を生々しい数字で示している。

役職月額所定内給与(千円・男女計)
部長級635.8
課長級529.2
係長級399.2
非役職(参考)312.0
出典:厚生労働省「令和 7 年 賃金構造基本統計調査」(8) 役職別にみた賃金、2026 年 3 月 24 日公表

係長から課長への 1 段上がりで月額 130 千円、課長から部長への 1 段で月額 106.6 千円 の差が生じている。年収換算では、係長 → 課長で約 188 万円、課長 → 部長で約 154 万円のジャンプとなる(本サイトの規定換算係数 月額 × 14.5 ベース。具体的な算出例の代入展開と複数ケース比較は、別途講座・書籍にて解説予定)。

この段差は、4 月の定期昇給を何年積み重ねても到達できないインパクトを持つ。逆に言えば、昇進機会のない職位に長く留まり続けることは、年収カーブを 平坦化 させる選択でもある。

性別で見ると、男性は部長 642.4 / 課長 541.4 / 係長 410.9 千円、女性は部長 578.3 / 課長 470.3 / 係長 365.7 千円。同じ役職でも性差が確認できることも、令和 7 年データの一つの示唆である。

第4章:転職という賭け — 雇用動向調査 R6 が示す "3 分の現実"

「転職すれば年収は上がる」と言う転職エージェントの広告は街に溢れている。しかし、公的統計が示す現実はもう少し冷静だ。

FACT-CARD 3 — 雇用動向調査 令和 6 年:転職入職者の賃金変動
増加 40.5% / 減少 29.4% / 変わらない 28.4%
増加した:40.5%(うち 10% 以上増加:29.4%)、減少した:29.4%(うち 10% 以上減少:21.7%)、変わらない:28.4%、不明 1.7%。「増加」が「減少」を 11.1 ポイント上回る
出典:厚生労働省「令和 6 年 雇用動向調査結果の概況」第 3 章、2025 年 8 月公表

つまり転職は、3 つの結果に分かれる賭けである。約 4 割が上がり、約 3 割が下がり、約 3 割は変わらない。広告のキャッチコピーは事実の一部だけを切り取っており、本当の姿は「上がる確率が下がる確率よりやや高い」程度の構図だ。

ただし、4 割が 10% 以上の大幅増を経験しているのも事実で、これは 4 月の定期昇給では数年掛けても届かない上昇幅である。「成功した転職」のインパクトは確かに大きい。

年代別・雇用形態別の傾向

雇用動向調査の細目を見ると、若年層ほど「増加」が「減少」を上回り、シニア層ほど「減少」が増える構造が浮かび上がる。30 代後半までは転職が上昇手段として機能しやすく、50 代以降は「現職維持の方が結果的に上がる」ケースが目立つ。

雇用形態別の差も大きい。正規 → 正規 の転職では「増加」が「減少」を 16.3 ポイント上回り、より「増加」寄りに傾く。

雇用形態で見比べる

正規・非正規の偏差値を同時に確認できます。転職を検討中の方、雇用形態間の格差を理解したい方向け。

第5章:加齢効果 — 静かに積み上がる年功カーブの真実

最後のタイミングは、もっとも目立たないが、もっとも長く続く効果である。日本の労働市場には依然として 年功カーブ が残っており、ただ働き続けるだけで年収が増えていくフェーズがある。

令和 7 年 賃金構造基本統計調査(第 6-1 表 男性正社員)を見てみよう。

FACT-CARD 4 — 男性正社員の年齢別月額(千円)
20-24 歳 250.0 → 55-59 歳 460.7(ピーク)→ 60-64 歳 390.5
20-24 歳 250.0、30-34 歳 337.0、40-44 歳 406.3、50-54 歳 449.2、55-59 歳 460.7(ピーク)、60-64 歳 390.5(再雇用で大きく下降)、65-69 歳 341.7。
出典:厚生労働省「令和 7 年 賃金構造基本統計調査」第 6-1 表

20 代前半から 50 代後半のピークまで、約 35 年かけて月額が 210 千円増加している。年率に直すと約 1.7% の加齢効果が静かに積み上がっていることになる。

ただし、ピークは 55-59 歳 であり、60 歳の再雇用で大きく逆向きに動く点も無視できない。「定年後も働き続ければ年収はそのまま」と思っている方は、賃構調の数字を一度確認しておく価値がある。

加齢効果の最大の特徴は、選択しなくても自動的にやってくることだ。4 月の定期昇給が制度的にこれを下支えしており、転職や昇進と異なり「来ない可能性」がない。

第6章:あなたの今の位置を知る — 4 月後の自分を確認するために

ここまで、年収が上がる 5 つのタイミングを公的データで分解してきた。最後に、これを 自分の物語 として読み替える。

5 つのタイミングの中で、自分が今どこにいるかは、属性によって大きく異なる。同じ 35 歳でも、4 月の春闘反映を受け取ったばかりの人と、転職を考えている人と、課長昇格目前の人では、次に起こる年収変動の質と量が違う。

そこで意味を持つのが「いまの自分は同属性の平均からどのくらいの位置にいるか」という相対指標、すなわち偏差値である。4 月の 5.25% を受け取った後の現在地、来年の昇進を見据えた現状、転職前後の比較 — これらはすべて、属性別の偏差値で初めて意味を持ちます。

1 分で診断 — あなたの令和 7 年 年収偏差値

性別・年齢・学歴・企業規模・業種・都道府県の 6 属性を入れるだけで、令和 7 年 賃金構造基本統計調査に基づくあなたの偏差値が、全国基準・同業種・同年代/同性別・企業規模・学歴・東京都の 6 観点で表示されます。

この記事のまとめ

それぞれのタイミングを、感覚ではなく公的データで把握する。これが、自分のキャリアと家計の意思決定を支える最も静かで確かな武器になります。