コラム記事 / 学歴と生涯賃金

勉強の「時給」はいくらか
― 学歴と生涯賃金の関係を令和7年データで見る

公開日: 2026-09-01 更新日: 2026-09-01 監修: DataLabo 編集部 カテゴリ: 学歴別年収 / 生涯所得偏差値

インターネット上では、「勉強に1,000時間を費やすと、生涯年収が◯◯円上がる。だから勉強の時給は◯万円だ」というような主張を時折見かけます。生涯にわたって得られる金額の差を、そのために費やした時間で割って「時給」に変換するという考え方自体は、投資対効果を直感的に把握するための一つの手法として、決して的外れではありません。

本記事では、この「勉強の時給換算」という考え方を、厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」と、当サイトが以前に試算した生涯所得のデータを使って、実際に検証してみます。あわせて、この種の計算にどのような前提が置かれているのか、どこまでを「事実」として受け取ってよいのかも、あわせて整理します。


第1章:学歴と年収の関係は、どこまで「事実」なのか

学歴と年収の関係については、これまでも度々話題になってきました。「良い大学に行けば、将来の年収が上がる」という考え方は広く知られていますが、その根拠として示される数字の多くは、転職サイトの登録者データや、特定の調査会社による民間の推計値です。

一方で、厚生労働省が毎年公表している「賃金構造基本統計調査」は、全国約5万事業所を対象にした公的統計であり、学歴別の月額給与という「事実」をそのまま示しています。まずはこのデータから、学歴による年収差がどの程度あるのかを確認していきます。


第2章:令和7年データで見る、学歴別の月額給与

厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」第3表(学歴・年齢階級・性別)の年齢計データから、学歴別の月額所定内給与(千円)を見てみます。

学歴男女計
高校297.2321.7245.0
専門学校313.7338.3287.5
高専・短大321.2375.3294.4
大学396.3429.6327.4
大学院517.4534.8438.2

出典:厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」結果の概況 第3表(2026年3月24日公表)

同じ「男」の区分で高校卒と大学卒を比べると、月額の差は429.6−321.7=107.9千円です。年収に換算する場合、正社員の賞与を考慮した係数(月額×14.5)を掛けると、年間で約156万円の差になります。これが1年あたりの差です。次の章では、これを職業人生全体で積み上げた場合にどうなるかを見ていきます。

図1|学歴別 月額所定内給与(男女計、令和7年)
MONTHLY WAGE BY EDUCATION LEVEL — both sexes, 2025
学歴が上がるほど段階的に上昇
高校297.2千円
専門学校313.7千円
高専・短大321.2千円
大学396.3千円
大学院517.4千円
高校297.2千円から大学院517.4千円まで、学歴が上がるにつれて月額給与が段階的に上昇しています。高校と大学院の差は220.2千円、年収換算で約319万円です。
SOURCE:厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」結果の概況(2026年3月24日公表)第3表、男女計・年齢計。

第3章:生涯所得で見ると、差はさらに大きくなる

年収の差は、1年ではそれほど大きく見えなくても、職業人生全体(22歳から64歳までの43年間)で積み上げると、印象が変わります。

当サイトでは以前、令和7年の賃金構造基本統計調査と「就労条件総合調査 令和5年」(退職金データ)を組み合わせて、学歴×性別の4つの区分について、生涯所得(給与・賞与・再雇用・退職金の合計)を試算しました。

属性生涯所得
大卒 男約2.7億円
高卒 男約2.1億円
大卒 女約2.1億円
高卒 女約1.6億円

出典:生涯所得偏差値で見る、大卒男60/高卒女40(厚生労働省 令和7年 賃金構造基本統計調査+就労条件総合調査 令和5年をもとにした当サイトの試算)

ここで一つ注意しておきたい点があります。この表を見ると「大卒男」と「高卒女」の差(約1.1億円)が一番大きく見えますが、これは学歴の差と性別の差が両方混ざった数字です。学歴だけの効果を見たい場合は、同じ性別の中で学歴を比べる必要があります。

こちらの方が、学歴という一つの属性による差により近い数字と言えます。

図2|生涯所得の学歴×性別比較(令和7年データ試算)
LIFETIME INCOME BY EDUCATION × GENDER — model estimate, 2025
男性 女性
大卒 男約2.7億円
高卒 男約2.1億円
大卒 女約2.1億円
高卒 女約1.6億円
同じ性別内で学歴だけを比べると、男性は約6,000万円、女性は約5,000万円の差があります。学歴をまたいで性別も変える比較(大卒男 vs 高卒女など)は、学歴と性別の効果が混ざるため、本記事では性別を揃えた比較を採用しています。
SOURCE:厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」+「就労条件総合調査 令和5年」(退職金)をもとにした当サイトの試算(22歳〜64歳、給与・賞与・再雇用・退職金の合計)。

第4章:勉強の「時給」を試算してみる

ここからが本題です。「学歴による生涯所得の差」を、そのために費やした時間で割ると、時給換算した数字が出せます。

ただし、ここで一つ、明確にしておく必要があります。「大学に進学するために何時間の勉強が必要か」という数字は、公的統計には存在しません。個人の学力や志望校によって大きく異なるため、一律に定めることはできない性質のものです。

そこで本記事では、あくまで一つの仮定として、大学の標準修業年限である4年間、文部科学省の大学設置基準が目安として示す年間の学修時間(1年間でおよそ1,200時間)を4年間続けたと仮定し、合計4,800時間という数字を使って試算します。この4,800時間という数字自体は、実際に大学に進学するために必要な勉強時間を意味するものではなく、あくまで「学業に費やす時間の目安」として置いた仮定の数字である点に、あらためてご留意ください。

この仮定のもとで計算すると、次のようになります。

一般的なアルバイトの時給と比べると、かなり高い数字に見えます。この計算の考え方自体――生涯にわたる金銭的な差を、投じた時間で割って時間単価に変換する――は、投資対効果を直感的に理解するための手法として、特段間違ってはいません。

図3|学歴による生涯所得差の時給換算(仮定に基づく参考値)
HOURLY WAGE OF STUDY — based on an assumed 4,800 study hours, not an official statistic
大卒男 vs 高卒男12,500円/h
大卒女 vs 高卒女約10,400円/h
この数値は、大学の学修時間を4,800時間(年間1,200時間×4年、文部科学省の大学設置基準に基づく目安)と仮定した場合の試算です。実際に特定の大学に進学するために必要な勉強時間を示す公的統計ではなく、あくまで一つの仮定に基づく参考値です。
SOURCE:図2の生涯所得試算(令和7年データ)÷ 4,800時間(仮定)。仮定の詳細は第4章本文を参照。

第5章:この計算に、どこまで意味があるのか

ただし、この時給換算には、少なくとも3つの前提が置かれていることを、あわせて理解しておく必要があります。

① 学歴以外の要因が混ざっている

年収を決める要因は、学歴だけではありません。当サイトが令和7年データから算出した「年収に影響を与える6つの属性」の影響度ランキングでは、学歴(1.74倍)が最も大きな要因ですが、業種(1.60倍)や都道府県(1.58倍)も僅差で続いています。学歴による年収差の中には、進学先の選び方や、その後に選ぶ業種・勤務地といった、学歴以外の要因も含まれている可能性があります。

② 相関関係であって、因果関係の証明ではない

「勉強した人ほど年収が高い」という傾向があったとしても、それは「勉強したから年収が上がった」という因果関係を証明するものではありません。勉強に多くの時間を割ける環境にあった人は、他の面でも有利な条件を持っていた可能性がありますし、逆に大学に進学しなくても、別の要因で高い収入を得ている人もいます。

③ 将来のお金を「現在の価値」に割り引いて考える

生涯所得は22歳から64歳まで、40年以上にわたって受け取るお金の合計です。今の1万円と、40年後に受け取る1万円は、経済的な価値としては同じではありません。将来のお金を「今のいくらに相当するか」に置き換える考え方を、割引現在価値と呼びます。ここまでの試算(大卒男vs高卒男で約6,000万円、大卒女vs高卒女で約5,000万円の差)は、この割引を考慮せず、単純に金額を合計したものでした。

割引率の設定に絶対的な正解はありませんが、日本の公共事業評価では、慣例的に年4%程度の社会的割引率が参照されてきました。本記事でも一つの目安としてこの年4%を用い、令和7年データの年齢別給与カーブに学歴係数(大学卒1.317/高校卒0.987、生涯所得偏差値の試算で用いた係数)を適用して、22歳から64歳までの各年に発生する年収差を割り引いて合計し直しました。

比較割引前(単純合計)割引後(年4%で試算)
大卒男 vs 高卒男約6,000万円約2,500万円
大卒女 vs 高卒女約5,000万円約2,100万円

これを4,800時間で割ると、時給換算の数字も次のように変わります。

割引前の12,500円・約10,400円と比べると、半分以下の水準まで下がります。なお、割引率を年2%とした場合は、大卒男vs高卒男で約7,900円/時間、大卒女vs高卒女で約6,500円/時間となり、割引率の設定次第で結果が大きく変わることも分かります。この試算はあくまで一つの近似であり、実際の年収差が発生するタイミングを精密に再現したものではない点に、あらためてご留意ください。

図4|時給換算の割引前後比較(年4%で試算した参考値)
HOURLY WAGE — before and after discounting at an assumed 4% social discount rate
割引前 割引後(年4%)
大卒男vs高卒男(割引前)12,500円/h
大卒男vs高卒男(割引後)約5,200円/h
大卒女vs高卒女(割引前)約10,400円/h
大卒女vs高卒女(割引後)約4,400円/h
この割引後の数値は、年4%の社会的割引率(日本の公共事業評価で慣例的に参照される目安)を仮定した場合の試算です。割引率2%とした場合は大卒男vs高卒男で約7,900円/h・大卒女vs高卒女で約6,500円/hとなり、割引率の設定次第で結果が変わる点にご留意ください。
SOURCE:図3の試算(令和7年データ・4,800時間仮定)に、年4%の割引率を適用した当サイトの試算。

これらの前提を踏まえると、「勉強の時給は1万円を超える」という数字は、割引現在価値を考慮しない単純計算による一つの参考値であり、割引率を加味するとさらに小さくなる可能性がある、という点も含めて、学歴という一つの切り口から見た目安として受け取るのが妥当だと考えられます。


第6章:自分の年収は、学歴を含めた6つの属性でどう見えるか

ここまで見てきたように、学歴は年収に影響を与える大きな要因の一つですが、唯一の要因ではありません。実際の年収は、学歴・年齢・性別・業種・企業規模・都道府県という6つの属性が組み合わさって決まります。

「年収偏差値ラボ」では、この6つの属性を入力することで、あなたが同じ属性の人たちの中でどの位置にいるかを、約1分で診断できます。

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学歴別の年収差についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。


第7章:一つの物差しとして、冷静に受け取る

「勉強の時給は高い」という主張は、方向性としては妥当です。令和7年のデータを見る限り、学歴による年収差・生涯所得差は確かに存在し、それを時間で割ると、決して小さくない数字が出てきます。

ただし、その数字は、学歴以外の要因を含んだ、一つの仮定に基づく参考値であることも、あわせて理解しておく必要があります。「勉強すれば必ずこの通りになる」というものではなく、「学歴という切り口で見ると、これくらいの差がある」という一つの物差しとして、冷静に受け取るのが、データとの付き合い方として適切だと考えられます。


よくある質問

Q. 大卒と高卒で、生涯所得はどれくらい違いますか?
令和7年 賃金構造基本統計調査と就労条件総合調査 令和5年をもとにした当サイトの試算では、男性同士の比較で約6,000万円、女性同士の比較で約5,000万円の差があります。学歴と性別の両方が異なる比較(大卒男と高卒女など)では、差はさらに大きくなりますが、その場合は学歴と性別、両方の効果が混ざっている点に注意が必要です。
Q. 「勉強の時給」という考え方は正しいのですか?
生涯にわたる金銭的な差を、投じた時間で割って時間単価に変換するという計算の考え方自体は、投資対効果を直感的に理解する手法として妥当です。ただし、学歴以外の要因が年収差に含まれていること、相関関係であって因果関係の証明ではないこと、将来受け取るお金を現在の価値に割り引いて考える必要があること(下記の質問を参照)など、いくつかの前提を理解した上で参考値として受け取る必要があります。
Q. 将来受け取るお金の割引現在価値を考慮すると、数字はどう変わりますか?
日本の公共事業評価で慣例的に参照される年4%の社会的割引率を目安に試算すると、大卒男vs高卒男の生涯所得差は約6,000万円から約2,500万円に、時給換算では12,500円/時間から約5,200円/時間まで下がります。大卒女vs高卒女でも同様に、約10,400円/時間から約4,400円/時間まで下がります。割引率の設定によって結果は大きく変わるため、これも一つの参考値として捉える必要があります。
Q. 「東大卒の生涯年収」のような大学別のデータはありますか?
厚生労働省の賃金構造基本統計調査には、大学名までの調査項目はなく、「学歴別」(高校・専門学校・高専短大・大学・大学院)までのデータとなります。大学別の年収ランキングとして紹介される数字は、転職サイトの登録者データや民間の推計であることが多く、当サイトでは公的統計に基づかない大学別の数値は扱っていません。

編集部より
DataLabo 編集部
年収偏差値ラボ(DataLabo)編集部は、厚生労働省などの公的統計のみを一次出典として、年収・資産・退職金の偏差値を解説しています。本記事は令和7年 賃金構造基本統計調査に基づき、推測値を用いず、仮定を置く場合はその旨を明記する方針で執筆しています。
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