コラム記事 / 求人選びの落とし穴

「社員登用制度あり」求人でよく見る謳い文句、
実際に正社員になれる人はどれくらい?

公開日: 2026-09-06 更新日: 2026-09-06 監修: DataLabo 編集部 カテゴリ: 雇用形態 / 統計リテラシー

求人サイトを見ていると、よく目にする言葉があります。「未経験からでもOK」「住宅手当・寮完備」「社員登用制度あり」。今の生活を変えたいと考えている人にとって、この3つが並んだ求人は魅力的に映るはずです。

ただ、この組み合わせを見たときに、少し立ち止まって考えてみてほしいことがあります。「社員登用制度あり」という言葉は、「今すぐ正社員になれる」という意味ではありません。あくまで「制度としては存在している」というだけで、実際に登用されるかどうかは別の話です。

QUICK ANSWER / 結論
「社員登用制度がある」事業所は23.9%ですが、実際に過去1年間で登用実績があった事業所はわずか3.8%です。
制度の有無と、実際の登用実績はまったく別の数字です。「登用制度あり」という言葉だけを見て判断するのは早計だと言えます。

第1章:「未経験OK・寮完備・社員登用あり」は本当に信頼できるのか

実は、「未経験OK・寮完備」という組み合わせ自体が、日本の求人市場では派遣・期間契約の仕事によく見られる特徴でもあります。正社員採用の求人では、通常ここまで住居面の待遇を強調する必要がないためです。求人の謳い文句を鵜呑みにする前に、実際のデータを見てみましょう。


第2章:「制度がある」と「実際に使われている」はまったく別の話

企業が何らかの制度を設けることと、その制度が実際に機能していることは、必ずしもイコールではありません。育児休業制度や有給休暇の取得率がその典型例ですが、「社員登用制度」も同じ構造を持っています。

制度の有無を尋ねられれば、企業は「ある」と答えやすいものです。求人広告の見栄えも良くなります。しかし、その制度を使って実際に何人が正社員になったのか、という実績ベースの数字は、求人広告にはほとんど載っていません。ここに、求職者が見落としやすい情報の非対称性があります。


第3章:公的統計が示す現実——登用制度があっても、実際の登用はわずか3.8%

この点について、厚生労働省が実施した「派遣労働者実態調査の概況」に、参考になる数字があります。

派遣労働者が実際に就業している事業所を対象に調べたところ、「派遣労働者を正社員に採用する制度がある」と回答した事業所の割合は23.9%でした。一方で、その中で過去1年間に「実際に正社員に採用したことがある」と回答した事業所は、わずか3.8%にとどまっています。

図1|派遣労働者の正社員登用、制度の有無と実績の差
SYSTEM AVAILABILITY vs ACTUAL CONVERSION IN THE PAST YEAR
登用制度がある事業所の割合
23.9%
そのうち過去1年に実際に登用した割合
3.8%
紹介予定派遣を利用したことがある割合(参考)
7.1%
登用制度の有無  実際の登用実績  紹介予定派遣の利用実績
「制度がある」事業所のうち、実際に1人でも登用した実績があるのは6事業所に1つ程度です。
SOURCE:厚生労働省「派遣労働者実態調査の概況」(2023年11月24日公表)

23.9%という「制度がある」割合の中から、さらに実績のある3.8%だけが残る。つまり、求人に「社員登用制度あり」と書かれていても、実際に直近1年で誰かが正社員になった実績を持つ職場は、全体から見ればごく一部だということです。しかも、この3.8%は「事業所内で1人でも登用したか」という数字であり、応募した個人が実際に正社員になれる確率はこれよりさらに絞られると考えるのが自然です。


第4章:「紹介予定派遣」という、もう一つの正式な仕組みとの違い

紛らわしいのですが、日本の労働市場には「紹介予定派遣」という、法的に手順が定められた正式な制度も存在します。これは、一定期間の派遣就業を経たのち、派遣先企業と派遣労働者の双方が合意すれば、直接雇用(正社員を含む)へ切り替わることを前提とした仕組みです。

同じ厚生労働省の調査では、この紹介予定派遣制度を利用したことがある事業所の割合は7.1%でした。企業独自の任意の「社員登用制度」よりも利用している事業所の割合自体は高く、かつ、制度の性質上、双方の合意形成のプロセスが明確に設計されています。

DEFINITION / 紹介予定派遣とは
一定期間の派遣就業を経て、派遣先と派遣労働者の合意があれば直接雇用へ切り替わることを前提とした、法的に手順が定められた制度です。
企業が独自に運用する任意の「社員登用制度」とは、制度の性質も法的な位置づけも異なります。求人票に「社員登用制度あり」と書かれている場合と、「紹介予定派遣」という制度名が明記されている場合とでは、その中身がまったく異なる可能性があります。

第5章:求人を見るときに、確認しておきたいこと

ここまでの数字を踏まえると、「社員登用制度あり」という一文だけで転職・就職先を判断するのは、少し早計だと言えそうです。もし気になる求人に「登用制度あり」と書かれていたら、次のような点を確認してみることをおすすめします。

これらは、求人サイトの説明文だけでは分からないことがほとんどです。気になる場合は、面接や説明会の場で直接尋ねてみるのが確実です。


第6章:まず知っておきたいのは「今の自分の立ち位置」

正社員と非正規雇用の間には、実際にどのくらいの賃金差があるのでしょうか。厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」(2026年3月24日公表)によると、雇用形態間の賃金格差は正社員を100とした場合で67.4%、特に50代で差が最も大きくなることが分かっています。

「登用されればいずれ正社員」という将来の期待だけでなく、今の雇用形態でいる場合の賃金の実態を、客観的な数字として知っておくことも大切です。

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第7章:よくある質問

Q. 「社員登用制度あり」の求人は、実際に正社員になれますか?
厚生労働省「派遣労働者実態調査の概況」によると、派遣労働者が就業している事業所のうち登用制度がある割合は23.9%ですが、そのうち過去1年間に実際に正社員に採用したことがある割合はわずか3.8%です。制度の存在と実際の登用実績は別物であり、「登用制度あり」の文言だけで判断するのは早計です。
Q. 「社員登用制度」と「紹介予定派遣」は何が違いますか?
紹介予定派遣は、一定期間の派遣就業を経て派遣先と派遣労働者の双方が合意すれば直接雇用へ切り替わることを前提とした、法的に手順が定められた正式な制度です。一方、企業独自の「社員登用制度」は任意の仕組みで、法的な手順や基準は定められていません。厚労省調査では紹介予定派遣制度を利用したことがある事業所は7.1%でした。
Q. 求人選びで「社員登用制度あり」と書かれていたら、何を確認すればよいですか?
直近1年間で実際に何人が登用されたか、登用の判断基準は何か、登用後の給与水準が最初から正社員として採用された場合とどう違うか、の3点を確認することをおすすめします。これらは求人サイトの説明文だけでは分からないことが多く、面接や説明会の場で直接尋ねるのが確実です。

第8章:「制度の有無」ではなく「実績の数字」で判断する

「社員登用制度あり」という言葉自体は、嘘ではありません。ただし、それが「ほぼ確実に正社員になれる」ことを意味するわけではない、というのが公的統計から見えてくる実態です。

求人選びで大切なのは、謳い文句の魅力だけでなく、その裏にある実績の数字を確認する姿勢です。今回のデータが、その一つの手がかりになれば幸いです。

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編集部より
DataLabo 編集部
年収偏差値ラボ(DataLabo)編集部は、厚生労働省・金融庁などの公的統計のみを一次出典として、年収・資産・退職金の偏差値を解説しています。本記事は厚生労働省「派遣労働者実態調査の概況」(2023年11月24日公表)と「令和7年 賃金構造基本統計調査」(2026年3月公表)に基づいて執筆しました。特定の企業・サービスを念頭に置いた記事ではなく、求人業界全般に見られる訴求文言と公的統計の実態を比較する目的で執筆しています。

記事出典・参考データ: - 厚生労働省「派遣労働者実態調査の概況」(2023年11月24日公表) - URL: https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/haken/22/dl/haken22_gaikyo.pdf - 厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」結果の概況(2026年3月24日公表) - URL: https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/

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