年収を決める 6 つの属性
— 変えられる属性・変えられない属性
第1章:あなたの年収は「6 つの属性」の関数
「自分の年収って、なぜこの額なのか?」と考えたことはないでしょうか。仕事を頑張れば年収は上がる、と多くの人は信じています。しかし令和7年 賃金構造基本統計調査のデータを見ると、個人の努力ではどうにもならない「属性」が、年収の大半を決めていることが分かります。
本サイトの「年収偏差値(平均値版)」は、年収を決める要因を 6 つの属性に分解しています。
- 性別(男 / 女)
- 年齢(〜19歳から70歳〜まで 11 階級)
- 業種(電気ガス・金融・情報通信・医療福祉…16 業種)
- 企業規模(大 1,000人以上 / 中 100〜999人 / 小 10〜99人)
- 学歴(中学卒・高校卒・専門・短大・大学卒・大学院卒)
- 都道府県(47 都道府県、最高=東京、最低=青森)
同じ年収でも、これら 6 属性の組合せによって 偏差値は 10 ポイント以上振れます。つまり「全国上位5%」と「同属性で平均」が、同じ人物で起きうるのです。
本記事では、6 属性それぞれの影響度と具体的なデータ、属性間のクロス効果、よくある誤解、そして実践的なキャリア戦略まで、令和7年データで徹底的に掘り下げます。「なぜ自分はこの年収なのか」の答えを、公的統計から読み解いていきましょう。
第2章:なぜこの 6 属性なのか — 統計の構造が決めた軸
本サイトが選んだ 6 属性は、すべて 厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」が独立した統計表として公表している軸です。属性として何を選ぶかには明確な根拠があります。
| 属性 | 使用する公式表 | 分類数 |
|---|---|---|
| ① 性別 | 第2表(性・年齢階級別) | 2 区分 |
| ② 年齢 | 第2表(同上) | 11 階級 |
| ③ 業種 | 第5-1表(産業別) | 16 業種 |
| ④ 企業規模 | 第4表(企業規模別) | 3 区分 |
| ⑤ 学歴 | 第3表(学歴別) | 6 区分 |
| ⑥ 都道府県 | 第1-10表 参考表1(都道府県別) | 47 都道府県 |
これら 6 属性は、賃金構造基本統計調査が 「年収を切り分けて公表する基本軸」として定めているものです。ここから外れる属性(例:勤続年数・職位・出身大学)は、公的統計に独立した集計が存在しないか、サンプルを細分化しすぎて統計的信頼性が担保できないために、本サイトでは扱っていません。「公的統計の構造をそのまま反映する」のが本サイトの透明性方針です。
つまり、この 6 属性は「筆者の主観で選んだもの」ではありません。国の統計設計そのものが「この 6 軸で賃金を語ることが妥当である」と判断した結果です。
※ 雇用形態(正規 / 非正規)は別軸として、06 雇用形態版で取り扱います。正社員月額 358.8 千円に対して非正規月額 241.7 千円(格差 67.4%)という大きな差があるため、独立した診断ツールとして分離しています。
第3章:6 属性それぞれの影響度ランキング
各属性の「影響度」を、令和7年データの 補正係数の最大値/最小値の比率でランキングすると、以下の順になります。
※ 影響度ランキングは「最大値 / 最小値」の比率で計算しています。ただし年代×性別は人生で自然に変動するため、瞬間的な影響度ではなく 世代キャリアの累積効果として捉えるべきです。
※ 各バーは「その属性の最高補正係数 / 最低補正係数」の比率を表しています。
視点:学歴の影響度が最大という現実
意外かもしれませんが、令和7年データで見ると 「学歴」が 6 属性中もっとも影響度が大きいのです。中学卒(係数 0.844)と大学院卒(1.519)の差は 1.80 倍。これは業種や地域より大きいことになります。
「学歴より経験が大事」「業界選びがすべて」という常套句は、データ的には 半分しか正しくないことが分かります。もちろん、「学歴だけで年収が決まる」とも言えません。重要なのは、6 属性すべてを俯瞰して「自分のどこが有利で、どこが不利か」を知ることです。
第4章:6 属性を深掘りする — 具体データで見る各属性の実態
影響度ランキングの「数字の意味」をより正確に理解するために、ここから各属性を具体的なデータとともに深掘りしていきます。
① 性別:男性 373.4 千円 vs 女性 285.9 千円
一般労働者の月額は 男性 373.4 千円、女性 285.9 千円。格差指数 76.6(男性=100)です。この格差は「同じ仕事で 76.6%」ではなく、勤続年数の差・管理職比率の差・業種偏り(女性比率が高い医療福祉等は低賃金)の複合効果です。
② 年齢:ピークは 55-59 歳
日本の賃金カーブは年功序列型の特徴を色濃く残しており、年齢が上がるほど賃金は上昇し、55-59 歳でピークを迎えます。その後、60 歳の再雇用・嘱託契約への移行とともに急落します。20 代前半(237.3 千円)から 50 代後半(396.9 千円)にかけて 約 1.67 倍の賃金上昇があります。
ただし、これは「時間が経てば自動的に年収が上がる」ことを意味するのではなく、年功的な昇給体系が依然として日本の賃金構造の中核であることを示しています。後述するように、業種によって賃金カーブの傾斜角度は全く異なります。
③ 業種:電気ガス 1.304 vs 宿泊飲食 0.814
16 業種の補正係数を見ると、業種選択が年収に与える影響の大きさが際立ちます。上位 3 業種は電気ガス(1.304 / 月額 444.0 千円)、金融保険(1.227 / 417.8 千円)、情報通信(1.177 / 400.9 千円)。下位 3 業種は宿泊飲食(0.814 / 277.2 千円)、生活関連(0.863 / 294.0 千円)、医療福祉(0.903 / 307.6 千円)です。
電気ガスと宿泊飲食の月額差は 約 16.7 万円、年収換算で 約 252 万円の格差です。同じ年齢・同じ学歴・同じ企業規模でも、業種が違うだけでこれだけの差が生まれます。
④ 企業規模:大企業 385.1 千円 vs 小企業 305.6 千円
大企業 385.1 千円(×1.131)/ 中企業 326.2 千円(×0.958)/ 小企業 305.6 千円(×0.897)。格差 1.26 倍は 6 属性中最小ですが、月額差 79.5 千円は年収 約 120 万円に相当します。「小さい」のは他属性との相対比較であり、絶対額としては無視できません。
⑤ 学歴:大学院卒 517.4 千円 vs 高校卒 297.2 千円
学歴別の月額データ(男女計・年齢計)では、高校 297.2 千円、専門学校 313.7 千円、高専・短大 321.2 千円、大学 396.3 千円、大学院 517.4 千円となっています。大学院卒と高校卒の月額差は 220.2 千円、年収換算で 約 330 万円の差です。特に注目すべきは、大学卒と大学院卒の間にも 121.1 千円(年収約 182 万円)の差があることです。
⑥ 都道府県:東京 1.228 vs 青森 0.775
東京が最高(1.228)、青森が最低(0.775)で 1.58 倍の格差です。ただし生活コスト(特に住居費)は反映していないため、可処分所得ベースでは優位性は縮まります。上位は東京・神奈川(1.098)・大阪(1.056)、下位は青森・宮崎(0.778)・沖縄(0.785)です。
第5章:変えられる属性・変えられない属性
6 属性は、人生の段階によって「変えやすさ」が大きく異なります。これを整理することで、キャリア戦略の焦点が見えてきます。
| 属性 | 変えやすさ | 戦略的含意 |
|---|---|---|
| ① 性別 | 変えられない | 受け入れて他で勝負 |
| ② 年齢 | 変えられない | 55-59歳ピーク、時間が味方 |
| ③ 業種 | 転職で変更可 | ×1.61。最重要変数 |
| ④ 企業規模 | 転職で変更可 | ×1.26。大vs小で年収120万差 |
| ⑤ 学歴 | 過去が決定 | ×1.80。院進学で変更可 |
| ⑥ 都道府県 | 引越しで変更可 | ×1.58。リモートでも効果 |
3 つの行動戦略
上記の整理から導かれる戦略は明確です。
- 変えられないもの(性別・年齢)に消耗しない:今の年代の同性別の中で何ができるかに集中しましょう
- 変えられるもの(業種・規模・地域)を能動的に選ぶ:転職・引越しは年収偏差値を 5〜10 ポイント動かしうるアクションです
- 過去の自分が決めたもの(学歴)は補強する:大学院・専門資格・MBA で「学歴属性」は実質変更可能です
第6章:属性の組合せで偏差値が 10+ ポイント振れる現象
同じ年収でも、属性の組合せで偏差値は驚くほど振れます。例として「30代男性・大学卒・大企業・東京・情報通信業」で年収 800 万円のケースを見てみましょう。
| ベース | 同属性平均 | 偏差値 |
|---|---|---|
| ① 全国 | 494 万 | 66.7 |
| ② 30-34歳男性 | 479 万 | 68.1 |
| ③ 情報通信業 | 588 万 | 59.7 |
| ④ 大企業 | 558 万 | 61.7 |
| ⑤ 大学卒 | 543 万 | 62.8 |
| ⑥ 東京都 | 607 万 | 58.6 |
| 多軸クロス | 783 万 | 50.6 |
同じ年収 800 万円でも、偏差値は 50.6 〜 68.1 の 17.5 ポイント差になります。全国基準で「上位5%」のエリートに見えても、同属性の中では「平均ちょうど」になります。
この現象は高所得層に限りません。年収 400 万円でも、「25歳女性・高校卒・小企業・宿泊飲食・地方」なら同属性偏差値 62.8、「45歳男性・大学卒・大企業・金融・東京」なら 35.4 と、同じ全国偏差値 47.2 でも同属性では 27.4 ポイント差が生まれます。
視点:「全国偏差値」と「同属性偏差値」は別物
転職市場・昇給交渉で本当に効くのは、同属性偏差値です。「全国上位5%」は SNS で話せる自慢ネタにしかならない一方、「同年代・同業種・同規模で偏差値60」は人事評価・転職交渉で実際に意味を持つ数字です。
属性を絞り込むほど母集団は小さくなりますが、その分「自分と本当に競合する人たち」の中での位置が見えてきます。
第7章:クロス効果 — 属性の掛け算が生む巨大な格差
ここまでは各属性を単独で見てきましたが、現実の年収は 6 属性の掛け算で決まります。この「クロス効果」を見ると、単独の属性だけでは見えない構造が浮かび上がります。
学歴 × 企業規模のクロス効果
学歴と規模を掛け合わせると、大学院卒×大企業の推定月額は約 518 千円、高校卒×小企業は約 236 千円。その差は 約 2.19 倍です。学歴単独では 1.80 倍、規模単独では 1.26 倍ですが、掛け合わせると 2 倍を超える格差が生まれます。
年齢 × 業種のクロス効果
業種によって賃金カーブの傾斜角度が全く異なります。電気ガス・金融保険は年功カーブが急勾配(50代で20代の 2 倍以上)、宿泊飲食・生活関連はほぼ平坦です。「今は我慢すれば給料は上がる」は業種によって成り立つ場合と成り立たない場合があるということです。
性別 × 年齢のクロス効果
男女間賃金格差は年齢によって大きく変化します。20代前半では男女格差はほぼ存在しません(女性/男性 = 95%以上)が、30代で 80%前後に拡大し、50代で 65〜70%まで最大化します。出産・育児による離職や時短勤務の影響が構造的に反映されています。格差が拡大するタイミングを知っておくことで、ライフプランの中での備えが可能になります。
第8章:よくある誤解 — 属性にまつわる 5 つの思い込み
年収と属性の関係については、根強い誤解がいくつかあります。令和7年データに照らして、一つずつ検証してみましょう。
誤解 1:「学歴は関係ない時代になった」
「学歴不問」の求人は増えていますが、マクロデータでは学歴別の賃金格差は 6 属性中最大(1.80 倍)のままです。「学歴不問で採用する」と「学歴で賃金差がない」は全く別の話です。
誤解 2:「東京で働けば誰でも高年収」
東京の係数は 1.228 ですが、住居費は全国平均の 1.5〜2 倍です。手取りベースでは賃金プレミアムの大部分が住居費に吸収されます。手取り偏差値版で実質的な位置を確認してみてください。
誤解 3:「大企業に入れば安泰」
大企業の影響度は ×1.26 で 6 属性中最小です。大企業でも宿泊飲食(×0.814)であれば、中小の電気ガス(×1.304)に負けます。規模より業種の方が年収への影響が大きいのです。
誤解 4:「年収が低いのは努力不足」
令和7年データが示しているのは、年収の大部分は属性(=環境)によって決まるということです。「努力が報われない」のではなく、「努力が効く属性と効かない属性がある」のがデータから読める事実です。
誤解 5:「偏差値が高い = 優秀な人」
年収偏差値は 統計的な位置であり、能力や仕事の価値の指標ではありません。医療福祉の係数は 0.903 で平均以下ですが、保育士・介護福祉士は社会に不可欠です。偏差値が低いのは「その属性集団の賃金水準が低い」ことを意味しています。
第9章:実践キャリア戦略 — 属性を動かして偏差値を上げる
ここまでの分析を踏まえて、属性を意識したキャリア戦略の具体例を整理します。属性は「運命」ではなく、一部は能動的に動かすことが可能です。
戦略 1:業種の切替え(影響度 ×1.61)
「変えられる」かつ「影響度が大きい」のが業種です。卸売小売→情報通信で年収約 119 万円、医療福祉→金融保険で約 166 万円、宿泊飲食→電気ガスで約 252 万円の上昇が見込めます。業種転換は簡単ではありませんが、「スキルの横展開」(例:飲食のマーケ経験を IT マーケ部門に活かす)という形なら現実的です。
戦略 2:企業規模の変更(影響度 ×1.26)
小企業(0.897)→ 大企業(1.131)で年収約 120 万円の上昇が見込めます。大企業は中途採用のハードルが高いものの、中企業(0.958)→ 大企業(1.131)であれば年収約 87 万円の差で実現可能性が高まります。
戦略 3:居住地の変更(影響度 ×1.58)
物理的な引越しなしでも効果を得る方法があります。リモートワークで東京本社の企業に所属すれば東京の賃金水準(×1.228)で地方在住が可能です。また、東京に出なくても名古屋(×1.020)や大阪(×1.056)に移るだけで偏差値は上昇します。
戦略 4:学歴の実質変更(影響度 ×1.80)
社会人大学院・MBA・専門職大学院で学歴属性は実質的に変更可能です。大学卒(×1.164)→ 大学院卒(×1.519)で年収約 182 万円の差があり、大学院の学費 200〜300 万円は 卒業後 2 年以内に回収できる計算になります(ただし業種・規模によってプレミアムは異なります)。
複合戦略:2 つ以上の属性を同時に動かす
最も効果が大きいのは、複数の属性を同時に動かすことです。例えば「地方の小企業の卸売小売 → 東京の大企業の情報通信」へ 3 属性を同時に変更すると、推定年収は 約 2.26 倍になります。ハードルは高いですが、「何をどの順番で変えるか」を計画する上で、各属性の影響度を定量的に把握していることが大きなアドバンテージになります。
第10章:6 属性診断ツールの効果的な使い方
本記事で解説した 6 属性すべてをアプリ化したのが、本サイトの「年収偏差値(平均値版)」です。ここでは、診断ツールを最大限に活用するための 3 つのステップを紹介します。
ステップ 1:現在地を確認する
6 属性 + 年収を入力すると、6 ベースすべての偏差値が同時表示されます。全国偏差値が高く同属性偏差値が低ければ「恵まれた属性に支えられている」状態、逆なら「属性のハンデを努力でカバーしている」状態です。
ステップ 2:弱い属性を特定する
6 つの中で最も低い偏差値が「あなたにとって不利な属性」です。業種基準だけが低ければ「今の業種の中では優秀だが業種自体の賃金水準が低い」ことを意味します。
ステップ 3:「もし○○だったら」をシミュレーション
入力値を変更すれば、「業種だけ変えたら?」「東京から名古屋に引っ越したら?」がすぐ分かります。変えられる属性を 1 つずつ動かして偏差値の変化を比較してみてください。
入力に約 1 分。令和7年 賃金構造基本統計調査の実数値だけで計算(推測値ゼロ)。
「全国基準」「同年代基準」「同業種基準」「同規模基準」「同学歴基準」「東京基準」の 6 つの偏差値を一気に把握できます。
診断結果を見ると、自分の「強い属性」と「弱い属性」が一目で分かります。強い属性は維持し、弱い属性は転職・移住・スキルアップで動かす — これが属性ベースのキャリア戦略の核心です。
第11章:まとめ — 戦略は「変えられる属性」に焦点を
本記事のポイント:
- 年収は 6 属性(性別・年齢・業種・企業規模・学歴・都道府県)の関数です
- 影響度:学歴(1.80倍)> 業種(1.61倍)> 都道府県(1.58倍)> 企業規模(1.26倍)
- 属性は変えられない(性別・年齢)/ 過去が決めた(学歴)/ 変えられる(業種・規模・地域)の 3 タイプです
- クロス効果で最大 2.19 倍、同年収でも偏差値は 10+ ポイント振れます
- 戦略は変えられる属性への能動的選択に焦点を当てましょう
「年収を上げたい」と考えたとき、最もコストパフォーマンスが高いのは 属性の組替えです。業種・規模・地域のどれか一つでも動かせば、偏差値は 5〜10 ポイント変わります。
環境を変えるか、変えないか — それは皆さん自身の選択です。しかし、選択の前に「現在地を正確に知る」ことは、どちらを選ぶにしても損にはなりません。本サイトはそのための診断ツールを、推測値ゼロ・公的統計準拠で提供しています。
関連ツール:平均値版 / 中央値版 / 刈込版 / 手取り版 / 雇用形態版
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