コラム記事 / 集計範囲(±1σ)の読み方

【2026年度版(令和8年度)】
「集計範囲(同属性 ±1σ)」とは?
診断結果の「439万〜955万円」が意味するもの

公開日: 2026-08-24 更新日: 2026-08-24 監修: DataLabo 編集部 カテゴリ: 統計リテラシー / 年収偏差値

年収偏差値チェッカー(平均値版)で診断すると、結果画面の下のほうに、こんな一行が表示されます。

集計範囲(同属性 ±1σ) 439万〜955万円

偏差値や「上位◯%」はなんとなく分かるのに、この「集計範囲」だけは意味がつかみにくい——という声をいただくことがあります。しかもこの範囲、驚くほど幅が広いのです。本記事では、「集計範囲(同属性 ±1σ)」が何を表しているのか、なぜこんなに幅があるのかを、令和7年 賃金構造基本統計調査ベースの計算式に沿って解説します。

DEFINITION / 定義
集計範囲(同属性 ±1σ)とは
あなたと同じ属性(性別・年齢・学歴・企業規模・業種・都道府県)の人の推定平均年収を中心に、標準偏差1つ分(±1σ)の幅で示した年収の目安範囲です。正規分布を仮定すると、この範囲に同属性の人のおよそ68%が含まれると解釈できます。

第1章:偏差値の下に出てくる、もう一つの数字

年収偏差値チェッカーに性別・年齢・学歴・企業規模・業種・都道府県を入力して診断すると、まず目に飛び込んでくるのは「あなたの偏差値は◯◯です」という結果です。ここまでは分かりやすいのですが、その少し下に「集計範囲(同属性 ±1σ)」という統計用語つきの数字が置かれています。

初めて見ると、「集計範囲って結局、何の範囲?」「±1σって、何の記号?」と戸惑ってしまうのも無理はありません。実はこの一行、あなたの偏差値そのものよりも、「同じ属性の人たちの年収が、実際どれくらいバラついているか」を雄弁に語っている数字です。


第2章:おさらい——平均値版の偏差値はどう計算されているか

集計範囲を理解するには、まず平均値版の偏差値の計算式を押さえておく必要があります。

ここで言う「同属性の平均年収」とは、あなたが入力した性別・年齢・学歴・企業規模・業種・都道府県の6つの条件を掛け合わせて推定した年収です。全国平均をベースに、6属性それぞれの賃金係数を掛け合わせて算出します(詳しい仕組みは早見表はなぜズレる?正規分布の罠で解説しています)。

そして「集計範囲」は、この同属性平均年収と標準偏差から、次の式で導かれます。


第3章:「σ(シグマ)」とは何か——68-95-99.7ルール

σ(シグマ)は標準偏差を表す記号です。標準偏差は「平均からどれくらいバラついているか」を表す統計の単位で、正規分布を仮定した場合、平均からの距離(±何σか)に応じて、そこに含まれるデータの割合がほぼ決まっています。これは統計学の基本的な性質で、次のような目安があります。

図1|正規分布の「68-95-99.7ルール」
EMPIRICAL RULE — share of population within ±1σ / ±2σ / ±3σ
±1σ(約68%) ±1σ〜±2σ(合計約95%まで)
正規分布の中心(平均)から±1σの範囲に全体の約68%、±2σの範囲に約95%、±3σの範囲に約99.7%のデータが含まれる、滑らかな左右対称の釣鐘型曲線。 平均(μ) −1σ +1σ −2σ +2σ 人数 ↑
中央の濃い部分(±1σ)に全体の約68%、その外側(±2σまで)を合わせると約95%が含まれます。「集計範囲(±1σ)」の外側にいる人は、決して少数派ではありません。
SOURCE:正規分布の経験則(68-95-99.7ルール)。統計学の一般的な性質で、特定の調査データに基づくものではありません。

第4章:「439万〜955万円」を実際に計算してみる

では、冒頭の「439万〜955万円」がどう出てきたのか、実際の式にあてはめてみましょう。仮に、ある入力条件での同属性の推定平均年収が697万円だったとします。

項目計算結果
同属性の推定平均年収697万円
標準偏差(σ)697万円 × CV(0.37)約258万円
集計範囲の下限(−1σ)697万円 −258万円439万円
集計範囲の上限(+1σ)697万円 +258万円955万円
図2|同属性の推定平均年収を中心にした集計範囲(±1σ)
SEGMENT RANGE EXAMPLE — mean 697万, CV=0.37
下限(−1σ)439万
同属性平均697万
上限(+1σ)955万
下限と上限の差は約516万円。同属性の平均年収が697万円という、決して珍しくない条件でも、集計範囲はここまで広くなります。
SOURCE:当サイト平均値版の計算式(同属性平均年収 ×(1±CV)、CV=0.37)による試算例。

冒頭で紹介した「439万〜955万円」は、まさにこの計算にあてはまる数字です。属性を細かく絞り込んでいるにもかかわらず、範囲の幅はおよそ2倍以上——年収439万円の人と955万円の人が、統計上は「同じ集計範囲の中」に収まってしまうのです。


第5章:なぜ、6属性を揃えてもこんなに幅が出るのか

「性別・年齢・学歴・企業規模・業種・都道府県まで揃えたのに、なぜここまで差が出るのか」と感じる方は多いはずです。理由は、この6属性が年収を説明する「主要な」要因ではあっても、「すべて」ではないからです。

令和7年 賃金構造基本統計調査は、企業や個人からの回答を集計した公的統計であり、次のような要素までは属性として分解できません。

集計範囲(±1σ)の広さは、いわば「6属性だけでは説明しきれない、残りの個人差」を映し出す鏡です。同じ属性の人同士でも、実際の年収は決して一点に収束しません。


第6章:「集計範囲の外側」と「異常値の注意書き」は別物です

ここでもう一つ、混同しやすいポイントを整理しておきます。年収偏差値チェッカーには、集計範囲(±1σ)とは別に、入力した年収が極端にかけ離れている場合だけ表示される注意書きがあります。この注意書きは、集計範囲よりも広い±2σの範囲を基準にしています。

図3|「集計範囲(±1σ)」と「注意書きのしきい値(±2σ)」の違い
±1σ RANGE vs ±2σ WARNING THRESHOLD — same example (mean 697万)
集計範囲(±1σ)
同属性の約68%をカバー
439〜955万
注意書きのしきい値(±2σ)
同属性の約95%をカバー
181〜1,213万
集計範囲(±1σ)の外側は、統計上は珍しいことではありません(同属性のおよそ32%が該当)。診断ツールが「参考値です」と注意書きを出すのは、それよりもさらに外側、±2σ(同属性の約95%をカバーする範囲)からもはみ出した場合だけです。
SOURCE:当サイト平均値版の計算式(同属性平均年収 ×(1±CV)・(1±2CV)、CV=0.37)による試算例。

つまり、「集計範囲(439万〜955万円)から外れている」ことと、「診断ツールに注意書きが出る」ことは、しきい値が異なる別の話です。集計範囲の外側にいるだけで「異常」ではありません。診断結果に注意書きが表示されていなければ、偏差値はそのまま参考にして問題ありません。


第7章:集計範囲は「良い・悪い」を測るものではありません

集計範囲(±1σ)の中にいるか外にいるかは、優劣を表すものではありません。むしろこの数字が教えてくれるのは、「同じ属性」という区分自体に、もともと大きな幅があるという事実です。

年収偏差値という一つの数字だけを見ると、あたかも自分の位置が一点に定まっているように感じてしまいます。しかし実際には、同じ属性の人たちの年収は439万円から955万円まで広く分布しており、あなたの偏差値も、その分布の中の一点にすぎません。集計範囲は、偏差値という数字に「幅」の感覚を取り戻すための情報だと捉えると分かりやすくなります。


第8章:あなたの集計範囲を診断で確かめる

「自分の属性では、集計範囲がどれくらいの幅になるのか」は、実際に診断してみるのが一番確実です。

あなたの年収偏差値を診断する → 年収偏差値チェッカー(平均値版・約1分)

性別・年齢・学歴・企業規模・業種・都道府県を入力すると、偏差値・上位◯%とあわせて、あなたの属性での「集計範囲(同属性 ±1σ)」がそのまま表示されます。真ん中の人と比べたい場合は、中央値版もあわせてご確認ください。


第9章:数字の「幅」まで見て、現在地を知る

「集計範囲(同属性 ±1σ)」は、偏差値という一つの数字の裏にある「バラつき」を可視化した情報です。

集計範囲=同属性平均年収 ×(1±CV)、CV=0.37
例:同属性平均697万円 → 集計範囲は439万〜955万円(差 約516万円)
正規分布を仮定すると、この範囲に同属性の約68%が含まれます。

偏差値の一点だけでなく、その周りにどれだけの幅があるかまで見ることで、「自分の年収は同じ属性の中で特別に高い・低いわけではない」ということも、逆に「大きく外れている」ということも、より正確に読み取れるようになります。


第10章:よくある質問

Q. 「集計範囲(同属性 ±1σ)」とは何ですか?
年収偏差値チェッカー(平均値版)の診断結果に表示される、同じ属性(性別・年齢・学歴・企業規模・業種・都道府県)の人の年収が主に分布すると推定される範囲です。同属性の推定平均年収を中心に、標準偏差1つ分(±1σ)の幅を示しており、正規分布を仮定すると、この範囲に同属性の人のおよそ68%が含まれると解釈できます。
Q. 「439万〜955万円」という数字はどう計算されていますか?
平均値版では、同属性の推定平均年収に変動係数CV=0.37を掛けた値を標準偏差とみなします。たとえば同属性の推定平均年収が697万円の場合、標準偏差は697万円×0.37≒258万円となり、697万円±258万円で439万円〜955万円という範囲になります。
Q. なぜ集計範囲がこんなに広いのですか?
「同属性」は性別・年齢・学歴・企業規模・業種・都道府県の6要素を揃えた推定平均ですが、これらを揃えてもなお、役職・個人の業績・残業時間・企業ごとの賃金水準差など、統計では捉えきれない要因で個人差は残ります。集計範囲の広さは、6属性だけで年収が一意に決まるわけではないことを表しています。
Q. 自分の年収が集計範囲(±1σ)に入っていない場合はどうなりますか?
集計範囲(±1σ)に入っていなくても、ただちに異常というわけではありません。正規分布を仮定すると、同属性のおよそ32%はこの範囲の外側に位置します。診断ツールでは別途、より広い±2σの範囲(同属性のおよそ95%をカバー)から外れた場合にのみ「参考値」である旨の注意書きが表示されます。
Q. 「±1σ」と「±2σ」で、なぜ違う範囲が出てくるのですか?
σ(シグマ)は標準偏差のことで、平均からの散らばりの大きさを表す統計の単位です。±1σは標準偏差1つ分、±2σは2つ分の幅を意味し、範囲を広げるほどカバーする人数の割合も増えます(目安として±1σ≒68%、±2σ≒95%)。診断結果画面では、通常表示の「集計範囲」欄は±1σ、大きく外れた年収に対する注意書きは±2σを使っています。

編集部より
DataLabo 編集部
年収偏差値ラボ(DataLabo)編集部は、厚生労働省などの公的統計のみを一次出典として、年収・資産・退職金の偏差値を解説しています。本記事は令和7年 賃金構造基本統計調査(2026年3月公表)に基づく当サイトの計算式(CV=0.37)を用いた試算例であり、推測値を用いず、出典を明記する方針で執筆しています。±1σ・±2σの割合(約68%・約95%)は正規分布の一般的な性質であり、個々の属性の実際の分布とは厳密には一致しない目安です。
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