コラム記事 / 刈込版の集計範囲の読み方

【2026年度版(令和8年度)】
刈込平均版の「集計範囲(トリム後)」とは?
上位5%・下位5%を切り捨てる年収の境界線

公開日: 2026-08-24 更新日: 2026-08-24 監修: DataLabo 編集部 カテゴリ: 統計リテラシー / 年収偏差値

刈込平均版(03)で診断すると、結果画面に「集計範囲(トリム後)」という数字が表示されます。実はこの言葉、平均値版(01)の結果画面に出る「集計範囲(同属性 ±1σ)」(解説記事はこちら)とは、まったく違う計算で求められています。本記事では、刈込平均版の「集計範囲(トリム後)」が何を表しているのかを、令和7年 賃金構造基本統計調査ベースの計算式に沿って解説します。

DEFINITION / 定義
集計範囲(トリム後)とは
刈込平均版で選択したトリム率(上位◯%・下位◯%)に応じて、「どこからが除外の対象になるか」を示す年収の境界値です。標準偏差ではなく、対数正規分布の分位点(パーセンタイル)から算出します。

第1章:刈込版の結果画面に出てくる、もう一つの「集計範囲」

刈込平均版(03)は、上位・下位のトリム率をスライダーで自由に調整できるツールです。高所得者や低所得者を除外したら偏差値がどう変わるかを、自分の手で動かしながら確認できます。

診断結果には、偏差値・上位◯%とあわせて「集計範囲(トリム後)」という数字が表示されます。平均値版の「集計範囲(同属性 ±1σ)」と同じ名前の統計に見えますが、実はこの2つ、求め方がまったく違います。混同すると、数字の意味を取り違えてしまいます。


第2章:おさらい——刈込平均版はどう計算されているか

刈込平均版は、平均値版(正規分布・CV=0.37)とは異なり、対数正規分布を前提にしています。

この計算の考え方は刈込平均(トリム平均)とはで詳しく解説しています。本記事では、その結果画面に出てくる「集計範囲(トリム後)」という一つの数字にしぼって掘り下げます。


第3章:「集計範囲(トリム後)」は、平均値版の「±1σ」とは別物です

平均値版の「集計範囲(±1σ)」は、同属性平均年収 ×(1±標準偏差の比率)という、標準偏差ベースの計算でした。「同じ属性の人の年収がどれだけばらついているか」を表す数字です。

一方、刈込平均版の「集計範囲(トリム後)」は、標準偏差をまったく使いません。次の式で求められます。

これは、「年収を低い順に並べたとき、下から◯%目・上から◯%目に来る人の年収はいくらか」という分位点(パーセンタイル)の計算です。つまり刈込平均版の集計範囲は、「ばらつきの大きさ」ではなく「切り捨てる境界線そのもの」を示しています。

POINT / 混同しやすいポイント
同じ「集計範囲」という言葉でも、平均値版=標準偏差ベース刈込版=分位点(パーセンタイル)ベースと、指している統計量そのものが違います。数字の大きさを他のツールと単純比較しないよう注意が必要です。

第4章:「208万〜912万円」を実際に計算してみる

具体的な数字で確認しましょう。仮に、同年代・同性別の推定平均年収が500万円、トリム率が推奨設定の上位5%・下位5%だったとします。

図1|刈込平均版の分布と「集計範囲(トリム後)」の位置関係
LOG-NORMAL DISTRIBUTION WITH TRIM BOUNDARIES — median×0.87, σ_log=0.45, trim 5%/5%
集計範囲(中間90%) トリムされる部分(上下5%ずつ)
対数正規分布は右に長い裾を引く形をしており、下位5%と上位5%の分位点を境界に、中間90%が集計範囲(トリム後)として残る。上位側の境界は中央値よりかなり右(高額側)に離れている。 中央値 下位5% 上位5% 人数 ↑
年収分布は右に長い裾を引くため、「上位5%」の境界線は「下位5%」の境界線よりも、中央値からずっと遠い位置にあります。集計範囲の上限・下限は中央値を挟んで対称ではありません。
SOURCE:当サイト刈込平均版の計算式(中央値×0.87、対数正規分布 σ_log=0.45)による試算例。
項目計算結果
同年代・同性別の推定平均年収500万円
中央値500万円 × 0.87435万円
集計範囲の下限(下位5%)435万円 × exp(0.45 ×(-1.645))約208万円
集計範囲の上限(上位5%)435万円 × exp(0.45 × 1.645)約912万円

上限と下限の中央値からの離れ方が非対称になっている点に注目してください。下限(208万円)は中央値(435万円)の約0.48倍ですが、上限(912万円)は中央値の約2.10倍です。年収分布が右に長い裾を引いているため、「上位を切り捨てる境界線」の方が中央値からずっと遠くなります。


第5章:トリム率を上げると、集計範囲はどう動くか

トリム率(上位・下位を何%除外するか)を変えると、集計範囲の幅も変わります。同じ中央値435万円の例で、代表的な3つのトリム率を比べてみましょう。

図2|トリム率別の集計範囲(中央値435万円の例)
SEGMENT RANGE BY TRIM RATIO — median 435万, σ_log=0.45
トリム 2.5%/2.5%180〜1,051万
トリム 5%/5%(推奨)208〜912万
トリム 10%/10%244〜774万
トリム率を2.5%/2.5%→5%/5%→10%/10%と上げるほど、集計範囲の幅は871万円→704万円→530万円と狭くなります。上下を多く切り捨てるほど、範囲は中央値に近づいていきます。
SOURCE:当サイト刈込平均版の計算式(中央値×0.87、対数正規分布 σ_log=0.45)による試算例。バー幅は最大値(トリム2.5%/2.5%の範囲幅871万円)を100%として正規化。

刈込平均版のスライダーを動かして上位・下位の除外幅を広げると、集計範囲がリアルタイムで狭まっていく様子を、実際のツールで体感できます。


第6章:「集計範囲の外側」の警告は、この範囲と同じ基準です

ここが平均値版との、もう一つの違いです。平均値版では、通常表示の「集計範囲」は±1σ、大きく外れた場合だけ出る注意書きは±2σと、2つの異なるしきい値を使っていました(詳しくは平均値版の解説記事を参照)。

刈込平均版はよりシンプルです。入力した年収が集計範囲(トリム後)の外側にあると、そのまま「あなたの年収は集計範囲の外側です。この偏差値は参考値です」という注意書きが表示されます。表示される集計範囲と、注意書きが出るしきい値は、同じ上限・下限を使っています。

平均値版 vs 刈込平均版
平均値版:表示は±1σ、警告は±2σ(2段階のしきい値)
刈込平均版:表示される集計範囲=警告のしきい値(1つの基準)

第7章:集計範囲は「良い・悪い」を測るものではありません

集計範囲(トリム後)の外側にいるからといって、それ自体は優劣を意味しません。トリム率を上位5%・下位5%に設定した場合、母集団の上位5%・下位5%は、定義上つねにこの範囲の外側に位置します。むしろこの数字は、「どのくらいの割合を極端な値として切り捨てているか」を可視化するための情報です。

トリム率を自分で動かせるのが、刈込平均版の特徴です。「外れ値をどこまで許容するか」という前提そのものを自分の目で確かめながら、偏差値がどう変わるかを見てみてください。


第8章:刈込版であなたの集計範囲を確かめる

「自分の属性・自分が選んだトリム率では、集計範囲がどれくらいになるのか」は、実際に診断してみるのが一番確実です。

あなたの年収偏差値を診断する → 刈込平均版(トリム率スライダー付き・約1分)

トリム率をスライダーで0%〜20%まで調整でき、あなたの入力に応じた「集計範囲(トリム後)」がそのまま表示されます。平均値版の「集計範囲(±1σ)」との違いはこちらの記事で解説しています。


第9章:数字の「切り捨てライン」まで見て、現在地を知る

「集計範囲(トリム後)」は、刈込平均版が「どこまでを外れ値として扱っているか」を可視化した情報です。

集計範囲=中央値 × exp(σ_log × トリム率に対応するz値)、σ_log=0.45
例:中央値435万円・トリム5%/5% → 集計範囲は208万〜912万円
トリム率を上げるほど、範囲は中央値に近づいて狭くなります。

平均値版の「集計範囲(±1σ)」が「同属性のばらつきの大きさ」を示すのに対し、刈込平均版の「集計範囲(トリム後)」は「切り捨ての境界線」を示します。同じ言葉でも中身が違うことを踏まえて数字を読むと、自分の年収がツールの前提の中でどう扱われているかが、より正確に見えてきます。


第10章:よくある質問

Q. 「集計範囲(トリム後)」とは何ですか?
刈込平均版(03)の診断結果に表示される、選択したトリム率(上位◯%・下位◯%)に応じて「どこからが除外の対象になるか」を示す年収の境界値です。下限は下位トリム率に相当する年収、上限は上位トリム率に相当する年収を表します。
Q. 「208万〜912万円」はどう計算されていますか?
刈込平均版は対数正規分布(σ_log=0.45)を仮定し、中央値=同属性平均年収×0.87から、指定したトリム率に対応する分位点の年収を算出します。たとえば同年代・同性別の推定平均年収が500万円(中央値435万円)でトリム5%/5%の場合、下限は435万円×約0.477≒208万円、上限は435万円×約2.096≒912万円になります。
Q. これは平均値版の「集計範囲(±1σ)」と同じ意味ですか?
いいえ、計算方法がまったく異なります。平均値版の±1σは「同属性の人の年収がどれだけばらついているか」(標準偏差ベース)を表すのに対し、刈込版の集計範囲(トリム後)は「上位・下位何%を切り捨てるかの境界線」(分位点ベース)を表します。同じ「集計範囲」という言葉でも、指している統計量が違います。
Q. トリム率を変えると集計範囲はどう変わりますか?
トリム率を上げるほど、集計範囲は狭くなります。中央値435万円の例で比べると、トリム2.5%/2.5%で約180万〜1,051万円、5%/5%で約208万〜912万円、10%/10%で約244万〜774万円となり、外側を多く切り捨てるほど範囲は中央値に近づいていきます。
Q. 集計範囲の外側になると、どんな表示が出ますか?
入力した年収が集計範囲の外側にある場合、「あなたの年収は集計範囲の外側です。この偏差値は参考値です」という注意書きが表示されます。刈込版では、この注意書きのしきい値と、通常表示される集計範囲が同じ基準(同じ上限・下限)を使っている点が、平均値版(表示は±1σ・警告は±2σと二段階)との違いです。

編集部より
DataLabo 編集部
年収偏差値ラボ(DataLabo)編集部は、厚生労働省などの公的統計のみを一次出典として、年収・資産・退職金の偏差値を解説しています。本記事は令和7年 賃金構造基本統計調査(2026年3月公表)に基づく当サイトの計算式(σ_log=0.45、MEAN_TO_MEDIAN=0.87)を用いた試算例であり、推測値を用いず、出典を明記する方針で執筆しています。
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