年収偏差値ラボチェッカーの早見表は、上段=平均値版・下段=中央値版の2つの偏差値を並べて表示しています。年収が上がるほど2つの数字の差は広がり、偏差値60(年収680万円前後)を境に、それより上のレンジでは平均値版が急激に高くなります。結論から言うと、680万円未満はどちらを見ても大差なく、680万円を超えたら中央値版を優先するのが実態に近い読み方です。
年収偏差値ラボチェッカーのフロントページには、47都道府県別の年収偏差値早見表を掲載しています。表の各セルには、偏差値が2段で表示されています。上段が平均値版、下段が中央値版です。
年収が低めのレンジでは、この2つの数字はほとんど同じか、下段(中央値版)がわずかに高い程度です。ところが年収が上がっていくと、様子が変わります。たとえば北海道の年収1000万円のセルを見ると、上段(平均値版)は86、下段(中央値版)は72。実に14ポイントもの差が開いています。
同じ年収なのに、なぜ2つも偏差値があるのでしょうか。しかも金額が上がるほど、差はどんどん広がっていきます。「結局、自分はどちらの数字を指標にすればいいのか」——今回は、この疑問に令和7年データと数式で答えます。
年収偏差値ラボチェッカーは、年収データの性質に応じて2つの統計モデルを使い分けています。
実際の年収分布は、少数の高所得層が右に長い裾を引く非対称な形をしています。この分布の性質と、正規分布・対数正規分布の違いについては、用語解説ページ「正規分布(ベルカーブ)とは」で図解しています。まだ読んでいない方は、先にそちらに目を通すと本記事の数式が理解しやすくなります。
結論を先に数式で確認しましょう。全国・男女計の基準値(平均494万円、中央値430万円)を使い、平均値版・中央値版それぞれの偏差値を年収ごとに計算すると、次のようになります。
| 年収 | 平均値版 | 中央値版 | 差(平均−中央) |
|---|---|---|---|
| 400万 | 44.9 | 48.4 | −3.5 |
| 500万 | 50.3 | 53.4 | −3.0 |
| 600万 | 55.8 | 57.4 | −1.6 |
| 680万 | 60.2 | 60.2 | ±0 |
| 700万 | 61.3 | 60.8 | +0.4 |
| 800万 | 66.7 | 63.8 | +2.9 |
| 900万 | 72.2 | 66.4 | +5.8 |
| 1000万 | 77.7 | 68.8 | +8.9 |
| 1200万 | 88.6 | 72.8 | +15.8 |
年収680万円のとき、平均値版・中央値版とも偏差値は約60.2で、ほぼ完全に一致します。これより低いレンジでは差はごくわずか(2〜4ポイント程度)ですが、680万円を超えると差は加速度的に広がり、1200万円では16ポイント近い開きになります。
この現象は、2つのモデルの計算方法の違いから生まれます。
平均値版は「年収の絶対額の差」をそのまま偏差値に反映する線形モデルです。年収が平均より100万円高ければ、200万円高い場合よりも常に半分の押し上げ効果、というように、金額の差がそのまま比例して偏差値に効きます。
一方の中央値版は、年収の対数を使うため「年収の絶対額の差」ではなく「年収の比率の差」が偏差値に効きます。年収が中央値の何倍かという発想なので、金額が大きくなるほど同じ1偏差値ポイントを上げるのに必要な絶対額は増えていき、伸びが緩やかになります。
実際の年収分布は、一部の高所得層が右に長い裾を引く非対称な形をしています(詳しくは「年収偏差値が「おかしい」のはなぜ?」で解説)。この裾の厚みを織り込んでいるのが対数正規分布=中央値版であり、高所得層においては中央値版のほうが実態の分布に近いと考えられます。平均値版は分布の対称性を仮定しているため、極端な高所得ほど「本来より珍しい」と過大評価してしまう構造的な性質があります。
ここまでの検証をもとに、実践的な目安をまとめます。
| 年収レンジ | 読み方の目安 |
|---|---|
| 680万円未満 | 差はごくわずか(2〜4ポイント程度)。どちらを見てもほぼ同じ判断になります。 |
| 680万〜900万円 | 差が広がり始める境目。実態に近い中央値版をやや優先しつつ、平均値版も参考にする程度で十分です。 |
| 900万円超 | 差が大きく開くレンジ。平均値版の数字は「参考値」と捉え、中央値版を優先して読むことをおすすめします。 |
この680万円という境目は、あくまで全国・男女計・全年代を基準にした値です。性別・年代・都道府県によって平均年収・中央値年収そのものが変わるため、実際の境目は属性ごとにずれます。正確な数字を知りたい方は、次の章の診断ツールで実際の属性を入力して確認してください。
同じ年収・同じ属性を、平均値版と中央値版の両方のツールに入力してみると、この記事の内容が具体的に実感できます。まずは両方の数字を確認し、ご自身の年収がどちらのレンジに入るか確かめてみてください。
平均値版と中央値版、どちらが「正しい」というわけではありません。同じ年収データを、異なる統計モデルという2つの視点から見ているだけです。年収680万円未満ではその違いはごくわずかですが、680万円を超えたあたりから、平均値版は年収の絶対額の差をそのまま反映し、中央値版は年収の比率の差を反映するという性質の違いが、はっきりと数字に表れてきます。
次に早見表やご自身の診断結果を見るときは、上段・下段どちらの数字も「同じ年収を、違うものさしで測っている」と捉えてみてください。ご自身の年収レンジに応じて、どちらのものさしを重視するかの手がかりになれば幸いです。
DataLabo(データラボ)は、日本の公的統計を最速で反映することを編集方針とするデータジャーナリズム媒体です。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」「就労条件総合調査」、家計の金融行動に関する世論調査(J-FLEC)など、行政・準行政の一次データを直接読み解き、診断ツール・解説記事として公開しています。
本記事は令和7年 賃金構造基本統計調査(2026年3月24日公表)の全国・男女計データ(平均494万円・中央値430万円)を基準に、当サイトの平均値版(CV=0.37の正規分布)・中央値版(σ_log=0.45の対数正規分布)それぞれの計算式を用いて算出しています。
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本記事は登録不要で公開しています。引用される場合は出典として「年収偏差値ラボチェッカー(平均値版と中央値版どちらが指標となる?)」を表記してください。