コラム / 読み方ガイド

年収偏差値、平均値版と中央値版どちらが指標となる? 偏差値60(年収680万円)が分かれ目

公開日 2026.08.21 更新日 2026.08.21 執筆|DataLabo 編集部 データソース|厚労省 令和7年 賃金構造基本統計調査

年収偏差値ラボチェッカーの早見表は、上段=平均値版下段=中央値版の2つの偏差値を並べて表示しています。年収が上がるほど2つの数字の差は広がり、偏差値60(年収680万円前後)を境に、それより上のレンジでは平均値版が急激に高くなります。結論から言うと、680万円未満はどちらを見ても大差なく、680万円を超えたら中央値版を優先するのが実態に近い読み方です。

CONTENTS / 目次
  1. 早見表の「2段の数字」に戸惑ったことはありませんか
  2. なぜ偏差値が2種類存在するのか
  3. 令和7年データで検証:偏差値60が分かれ目
  4. なぜ高所得になるほど差が開くのか
  5. 自分の年収では、どちらを見ればいいか
  6. 診断ツールで、自分の2つの数字を見てみる
  7. よくある質問(8 問)
  8. データソース / 編集部

早見表の「2段の数字」に戸惑ったことはありませんか

年収偏差値ラボチェッカーのフロントページには、47都道府県別の年収偏差値早見表を掲載しています。表の各セルには、偏差値が2段で表示されています。上段が平均値版、下段が中央値版です。

年収が低めのレンジでは、この2つの数字はほとんど同じか、下段(中央値版)がわずかに高い程度です。ところが年収が上がっていくと、様子が変わります。たとえば北海道の年収1000万円のセルを見ると、上段(平均値版)は86、下段(中央値版)は72。実に14ポイントもの差が開いています。

同じ年収なのに、なぜ2つも偏差値があるのでしょうか。しかも金額が上がるほど、差はどんどん広がっていきます。「結局、自分はどちらの数字を指標にすればいいのか」——今回は、この疑問に令和7年データと数式で答えます。

なぜ偏差値が2種類存在するのか

年収偏差値ラボチェッカーは、年収データの性質に応じて2つの統計モデルを使い分けています。

実際の年収分布は、少数の高所得層が右に長い裾を引く非対称な形をしています。この分布の性質と、正規分布・対数正規分布の違いについては、用語解説ページ「正規分布(ベルカーブ)とは」で図解しています。まだ読んでいない方は、先にそちらに目を通すと本記事の数式が理解しやすくなります。

令和7年データで検証:偏差値60が分かれ目

結論を先に数式で確認しましょう。全国・男女計の基準値(平均494万円、中央値430万円)を使い、平均値版・中央値版それぞれの偏差値を年収ごとに計算すると、次のようになります。

図 1|年収と偏差値の関係:平均値版 vs 中央値版
DEVIATION SCORE BY INCOME / 全国・男女計基準(平均494万・中央値430万)
平均値版(正規分布 CV=0.37) 中央値版(対数正規分布 σ_log=0.45)
年収300万円から1300万円における平均値版・中央値版の偏差値カーブ。年収680万円・偏差値60.2付近で2本の線が交差し、それより高い年収では平均値版が中央値版を大きく上回る。 40 50 60 70 80 300万 600万 680万 (偏差値60.2で交差) 900万 1200万
年収 680万円・偏差値60.2 付近で2本の線が交差する。それより年収が低いレンジでは中央値版(金色)がやや高く、680万円を超えると平均値版(青)が急激に上へ離れていく。
SOURCE:厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査」全国・男女計(平均494万円・中央値430万円)を基準に算出
年収平均値版中央値版差(平均−中央)
400万44.948.4−3.5
500万50.353.4−3.0
600万55.857.4−1.6
680万60.260.2±0
700万61.360.8+0.4
800万66.763.8+2.9
900万72.266.4+5.8
1000万77.768.8+8.9
1200万88.672.8+15.8

年収680万円のとき、平均値版・中央値版とも偏差値は約60.2で、ほぼ完全に一致します。これより低いレンジでは差はごくわずか(2〜4ポイント程度)ですが、680万円を超えると差は加速度的に広がり、1200万円では16ポイント近い開きになります。

なぜ高所得になるほど差が開くのか

この現象は、2つのモデルの計算方法の違いから生まれます。

図 2|年収帯ごとの偏差値の差(平均値版 − 中央値版)
GAP BY INCOME BAND / ゼロを境に色が変わる
400万
−3.5
500万
−3.0
600万
−1.6
680万
±0
800万
+2.9
1000万
+8.9
1200万
+15.8
680万円を境に、差はマイナス(中央値版が高い)からプラス(平均値版が高い)へ転じ、年収が上がるほど加速度的にプラス側へ広がる。
SOURCE:図1と同じ計算に基づく差分(平均値版偏差値 − 中央値版偏差値)

平均値版は「年収の絶対額の差」をそのまま偏差値に反映する線形モデルです。年収が平均より100万円高ければ、200万円高い場合よりも常に半分の押し上げ効果、というように、金額の差がそのまま比例して偏差値に効きます。

一方の中央値版は、年収の対数を使うため「年収の絶対額の差」ではなく「年収の比率の差」が偏差値に効きます。年収が中央値の何倍かという発想なので、金額が大きくなるほど同じ1偏差値ポイントを上げるのに必要な絶対額は増えていき、伸びが緩やかになります。

実際の年収分布は、一部の高所得層が右に長い裾を引く非対称な形をしています(詳しくは「年収偏差値が「おかしい」のはなぜ?」で解説)。この裾の厚みを織り込んでいるのが対数正規分布=中央値版であり、高所得層においては中央値版のほうが実態の分布に近いと考えられます。平均値版は分布の対称性を仮定しているため、極端な高所得ほど「本来より珍しい」と過大評価してしまう構造的な性質があります。

自分の年収では、どちらを見ればいいか

ここまでの検証をもとに、実践的な目安をまとめます。

年収レンジ読み方の目安
680万円未満差はごくわずか(2〜4ポイント程度)。どちらを見てもほぼ同じ判断になります。
680万〜900万円差が広がり始める境目。実態に近い中央値版をやや優先しつつ、平均値版も参考にする程度で十分です。
900万円超差が大きく開くレンジ。平均値版の数字は「参考値」と捉え、中央値版を優先して読むことをおすすめします。

この680万円という境目は、あくまで全国・男女計・全年代を基準にした値です。性別・年代・都道府県によって平均年収・中央値年収そのものが変わるため、実際の境目は属性ごとにずれます。正確な数字を知りたい方は、次の章の診断ツールで実際の属性を入力して確認してください。

診断ツールで、自分の2つの数字を見てみる

同じ年収・同じ属性を、平均値版と中央値版の両方のツールに入力してみると、この記事の内容が具体的に実感できます。まずは両方の数字を確認し、ご自身の年収がどちらのレンジに入るか確かめてみてください。

2つの偏差値を実際に見比べる
同じ年収・属性で、平均値版と中央値版それぞれの偏差値を計算できます。登録不要、約1分で完了します。

まとめ:2つの数字は「対立」ではなく「視点の違い」

平均値版と中央値版、どちらが「正しい」というわけではありません。同じ年収データを、異なる統計モデルという2つの視点から見ているだけです。年収680万円未満ではその違いはごくわずかですが、680万円を超えたあたりから、平均値版は年収の絶対額の差をそのまま反映し、中央値版は年収の比率の差を反映するという性質の違いが、はっきりと数字に表れてきます。

次に早見表やご自身の診断結果を見るときは、上段・下段どちらの数字も「同じ年収を、違うものさしで測っている」と捉えてみてください。ご自身の年収レンジに応じて、どちらのものさしを重視するかの手がかりになれば幸いです。

よくある質問

なぜ平均値版と中央値版で偏差値が違うのですか?
平均値版は年収そのものを正規分布(変動係数CV=0.37)で扱う線形モデル、中央値版は年収の対数(ln)を対数正規分布(σ_log=0.45)で扱うモデルだからです。前者は年収が伸びるほど偏差値も直線的に伸び、後者は金額が大きくなるほど同じ偏差値を上げるのに必要な「率」が一定になるため、伸びが緩やかになります。
結局、どちらの偏差値が指標となりますか?
全国基準・男女計で計算すると、年収680万円(偏差値60前後)でほぼ一致します。それより下のレンジは差が小さく(2〜4ポイント程度)どちらを見ても大差ありません。680万円を超えたあたりから中央値版のほうが実態に近くなるため、高所得層ほど中央値版を優先するのがおすすめです。
偏差値60(年収680万円)とは何の基準ですか?
令和7年 賃金構造基本統計調査の全国・男女計データ(平均494万円・中央値430万円)を基準に、平均値版(CV=0.37の正規分布)と中央値版(σ_log=0.45の対数正規分布)の偏差値計算式を数式で解いた交点です。年収680万円のとき、どちらの式でも偏差値は約60.2でほぼ一致します。
年収1000万円だと、なぜ平均値版が中央値版よりずっと高いのですか?
全国基準で計算すると、年収1000万円のとき平均値版は偏差値77.7、中央値版は偏差値68.8で、8.9ポイントの差が生まれます。平均値版は「年収の絶対額の差」をそのまま偏差値に反映する線形モデルのため、極端な高所得ほど偏差値が跳ね上がります。一方、実際の年収分布は右に長い裾を引く非対称分布に近く、高所得層は中央値版が算出する水準のほうが実態に近いと考えられます。
年収400万円台では、どちらの偏差値が高く出ますか?
年収400万円台〜600万円台のレンジでは、中央値版のほうがやや高く出ます(例:年収400万円で平均値版44.9・中央値版48.4、差3.5ポイント)。これは中央値(430万円)が平均(494万円)より低いため、同じ年収でも中央値版のほうが相対的に「平均より上」と判定されやすいためです。
偏差値60・年収680万円という基準は、男女・年代が変わっても同じですか?
いいえ、変わります。680万円は全国・男女計・全年代を基準にした値です。性別・年代・都道府県などの属性によって平均年収・中央値年収そのものが変わるため、交点となる金額も属性ごとにずれます。属性別の正確な偏差値は、平均値版中央値版それぞれに実際の属性を入力して確認してください。
47都道府県早見表の背景色は何を意味していますか?
早見表の背景色は、平均値版・中央値版の両方の偏差値で判定しています。オレンジ系=両方が偏差値60以上、グレー系=両方が偏差値50以上、白=どちらかが偏差値50未満です。また青いセル(東京・神奈川・愛知・大阪・福岡)は主要都市を示しています。
正規分布・対数正規分布についてもっと詳しく知りたい場合は?
正規分布(ベルカーブ)の基本、68-95-99.7の法則、偏差値の計算式との関係、正規分布と対数正規分布の違いを図解でまとめた用語解説ページ「正規分布(ベルカーブ)とは」を別途公開しています。統計の基礎から確認したい方はそちらをご覧ください。

データソース / 編集部

DataLabo 編集部について

DataLabo(データラボ)は、日本の公的統計を最速で反映することを編集方針とするデータジャーナリズム媒体です。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」「就労条件総合調査」、家計の金融行動に関する世論調査(J-FLEC)など、行政・準行政の一次データを直接読み解き、診断ツール・解説記事として公開しています。

本記事は令和7年 賃金構造基本統計調査(2026年3月24日公表)の全国・男女計データ(平均494万円・中央値430万円)を基準に、当サイトの平均値版(CV=0.37の正規分布)・中央値版(σ_log=0.45の対数正規分布)それぞれの計算式を用いて算出しています。

所在地: 大阪府大阪市淀川区宮原1丁目17番33号 北沢産業ビル 3階 HiveSpace 新大阪 / お問い合わせ: info@nenshuu.com


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